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年金制度見直し進行中

2011年10月 6日 13:35

6月に決定された「社会保障・税一体改革」は社会保障審議会の関係各部会を中心に具体化に向けた検討が進行している。

このうち年金は年金部会で、826日以降大幅に入れ替わった委員により審議されている。

再開第一回委員会では、基礎年金の「二分の一国庫負担」に要する財源を速やかに安定的に措置することを求める異例の建議が行われた。法律が求めている財政措置を欠いたまま、その年々に場当たりの財源捜しで対応している政府に正当な注文を付けたものである。

 

一体改革で提起された事項のうち次の項目を順次審議中で、可能なことからまとめて2012年の国会に法案提出をめざすとしている。

①受給資格期間の短縮 ②低所得者加算・障害基礎年金加算 ③高所得者の給付見直し ④第3号被保険者制度見直し ⑤在職老齢年金見直し ⑥産休期間中の保険料負担免除 ⑦マクロ経済スライド見直し ⑧支給開始年齢引き上げ ⑨標準報酬上限の引き上げ

 

これらには歓迎すべき考え方と認めがたい考え方が混在しており、年金受給者の立場からの主張が欠かせない。

退職者連合は急ぎ対応を協議し必要な働きかけをすすめることとしている。

自治退は、2月17日に連合が討議に付した「新21世紀社会保障ビジョン(案)」に対して見解(5月31日第2回自治退役員会確認)をまとめたが、ここで明らかにした問題意識は一体改革の項目と重なる点が多く、これを発展させながら意見反映する。

 

 

<連合年金構想に対する自治退見解>

20113

 

連合は2月17日の中央執行委員会で『新21世紀社会保障ビジョン』組織討議案を決定し、6月2日の中央委員会決定をめざして組織討議に付した。また、平行して2年に一度の『要求と提言』の改訂作業を進めている。内容の多くはこれまでの運動の蓄積と知見に基づくもので自治退としても基本的に賛同し、実現の運動を共有するものである。

とりわけ、年金積立金についてワーカーズキャピタル責任投資ガイドラインを決定し「年金基金の運用に際し社会責任投資を実施する」・「公的年金の適切な責任投資について検討する」としたことは画期的で、連合の見識と英断に敬意を表するとともに今後の具体的実現の取り組みに期待する。

しかし、年金に関する構想は懸念される内容も含んでいるので次の点について自治退としての見解を明らかにし、意見反映に努める。

 

.連合の「ビジョン」と「要求と提言」

連合の「年金ビジョン」は二段階で構想されており、「要求と提言」はその第一段階と整合するよう作られている。

第一段階

1.      基礎年金を全額税方式化する

2.      その財源は1/2を社会保障目的税(消費税)(2015年3%)、1/2を一般財源とする

3.      基礎年金の受給要件は、18歳以降5年間日本に居住した者、給付額は40年間居住で満額7万円とする

4.      基礎年金は年収250万円超からクローバック(所得に応じて基礎年金を減額すること)を開始し、500万円で全額返金とする

5.      被用者年金を一元化する

6.      被用者は非正規・短時間勤務者も被用者年金に加入する

7.      所得比例年金保険料は報酬月額の15%とし報酬月額67万円を上限とする

8.      基礎年金全額税方式化に伴い使用者側の保険料負担が軽減されるので所得比例年金の労使負担割合を使:55、労:45%とする

9.      移行期間中、低年金・無年金者に対し公費による基礎年金の補完給付をする

 

第二段階

1.      自営業者等の所得捕捉の徹底を図ったうえで、自営業者等が加入する所得比例年金を創設し、被用者を含めて一元化する

2.      基礎年金を所得比例年金が低い人に対する最低保障年金に転換する(消費税率は2025年で4%、年金額は40年間居住で満額7万円、クローバック開始は年収220万円超、500万円で全額返金)

3.      移行期間を40年程度かける

 

.自治退の問題意識・見解

1.    年金検討の作法 沿革の尊重と具体的全体像

⇒自治退の主張<検討の作法>:年金は長い経過をもち多くの関係者がいる制度であるので、総じて制度の変更について検討するときは、白地に絵は描けない。提言に当たっては①該当者の属性ごとに、税率・保険料率などの負担と給付の増減・加入資格の変化、②中長期収支計画と移行過程の全体像 について数値をもって示すことが必要である。こと年金に関してはイメージのみの論議は有害である。

 

2.    基礎年金の税方式化に疑問(最低保障年金とも共通)

1)税方式化の根拠としている「空洞化」論

未納・未加入者は年金を受給しないので年金数理の外にいる。免除者・学生特例は被用者による「保険料補填」ではなく将来の支給額で調整される立替に過ぎない。未納・未加入者は生活保護を含む社会保障全体では課題だが、年金に関して言えば空洞化や破綻、被用者の不当な負担にはつながらないので、制度変更の論拠たり得ない

 

※年金制度の加入率を高めるためにはむしろ、次のような提言を活用してはどうか。

・未納・未加入防止策①:職権による減免を実施する(未納率の低下)。次の段階では低収入による保険料減額・免除者に対し、税で保険料を補填してフルペンションにすることを考慮してはどうか(高所得で未納・未加入の確信犯は年金による生活保障の必要なし)。

・未納・未加入防止策②:基礎年金額の二分の一(掛け金相当分)を生活保護収入認定から除外することで年金加入のインセンティブを維持、モラルハザードを防止してはどうか。

(2)     税投入の優先順位

相対的に安定した保険料調達ができている現制度を維持すべき。消費税は医療・介護・保育・教育サービスにこそ充てるべき。国債発散が危惧されている今、増税分を年金に持ち込む余裕はない。政府は国際公約のプライマリバランス達成だけで+9%相当と認識。諸サービス充実プランとそれに要する財源を計算して優先順位をつければ基礎年金の全額税方式化という選択肢はないのではないか。

(3)     事業主負担

税方式化は事業主負担を家計に転嫁するもの、企業の社会的責任を免除すべきではない。

従前の要求では「事業主は基礎年金の6分の1負担(徴収名目不明)」としていたが、今回は「所得比例年金の事業主負担を55%・被用者45%に」にした。事業主負担を軽減させないための工夫は汲めるが、5%は妥当か・実現の展望はあるかという疑問がある上、制度論に一貫性がなく無理にこじつけたとの印象がある。

4)移行期間

「拠出履歴を無視」「新制度と拠出履歴による重複払い」のいずれかをとらない限り新旧制度並存期間が生じ、新制度への完全移行には長期の移行期間を要し、その管理に大きなコストとリスクを生む。ビジョンに言う移行期間40年間のリスクを負うことに見合うメリットはない。

(5)     保険料二重払い

制度が要求した保険料を納め終えた年金受給者は年金財源分の消費税により保険料の二重払いとなる。また、新制度における無年金者・低年金者・保険料免除対象者にも年金財源分の消費税負担が生ずる。(制度持続性のための給付と負担適正化の論議は否定しないが、このテーマは異なる次元で論じられており制度の信頼性を傷つける)

(6)     7万円保障と年収に応じた逓減」

7万円」の根拠と、生活保護基準・現在の基礎年金額との関係には説明が必要。また、年収「第1段階250万円」「第2段階220万円」逓減開始―「500万円」でゼロの根拠も説明が必要ではないか。

・保険料50:税50の現行制度の下で、一定の所得を超える者について税負担分のクローバックを求めることは掛け金相当額の給付は保障され、現実的で説得的である。社会保障国民会議はカナダ基準と有識者意見を参考に「年収600万円で開始・1000万円でゼロ」により試算している。

⇒自治退の主張<基礎年金・最低保障年金>:1/2保険料方式の基礎年金を維持し、効果的かつ現実的な保険料収納率向上策をとるべきである。税負担分については一定基準でクローバックを組み込むべきである。

 

3.「全国民共通・所得比例年金創設」に疑問

1)1号被保険者のうち自営・農業者で可能な者はすでに任意額で「国民年金基金」を利用している。これを廃止し共通年金にする場合、被用者の事業主負担相当額を含む保険料を強制的に納入することになるが、その負担に同意が得られるか。所得を捕捉し保険料を賦課徴収する実務は可能か。

2)1号被保険者のうち非正規労働者の厚生年金加入を妨げている事情のひとつは「標準報酬」の下限金額以下の収入の者の存在。厚生年金パターンの標準報酬なら相当低いランクを作る必要が生ずる。共通制度の掛け金はいかなる仕組みになるのか

(負担の力の低い被用者は事業主負担のみによる二分の一年金とする方式を検討してはどうか。)

3)共通の所得比例年金を新設したとき、それ以前の拠出履歴の差・積立金の取り扱いをどうするか。

4)新設される「共通の所得比例年金」には年金としての垂直的再分配機能(高所得者から低所得者への再分配)はあるのか(年金の再分配機能を税で肩代わりするという論であれば無理がある)。

⇒自治退の主張<所得比例年金一元化>:必要性・実現可能性に疑問のある所得比例年金一元化を無理に進めるべきではない。

連合の第一段階構想にある「被用者年金の一元化」、「国民年金加入を余儀なくされている非正規・短時間を含む被用者を被用者年金に加入させる」ことこそ速やかに実現すべきである。

 

4. マクロ経済スライド

賦課方式の年金では保険料を負担する被保険者数とその賃金水準から独立した年金給付はありえない。年金制度の基盤となる労働力人口と労働分配率を適正化する政策が必要である。そのうえで、既裁定年金について一定のスライド調整を行う場合は財産権保護の観点から、名目年金額引き下げなしの現行のマクロ経済スライドが限度ではないか

⇒自治退の主張<マクロ経済スライド>:既裁定年金額調整は現行のマクロ経済スライド制度によるスライドにとどめ、名目年金額を引き下げるべきではない。

 

5. 被用者年金一元化

⇒自治退の主張<被用者年金一元化>:連合が第一段階の目標としている「パートを含む全雇用労働者の厚生年金加入」「被用者年金一元化」を確実かつ速やかに実現してほしい。

被用者年金一元化にあたって「追加費用は雇用主負担で」という主張を支持し、その一環として「追加費用の一部削減反対」を追加してほしい。

 

6. 年金に対する課税

⇒自治退の主張<年金に対する課税>:「年金に対する課税増収分は年金財政へ」としていることに賛成。加えて総選挙マニフェストの「所得税年金関連控除復元」を追加してほしい(あるべき税制、あるべき年金受給者の負担について論議することは必要だが、まず選挙公約を実現した後に提起されるべきである)。

                                         

また、年金と関連して検討されている「税と社会保障の共通番号」については次の問題点があり、退職者連合・地公退要求討議に意見反映してきた。

①附番に住民票コード(住基ネット)を用いるとする意見があるが、コード制定時の「厳格に使途を制限する、という政府答弁と法令による制限列記」との整合性が必要 ②複数機関に存在する情報を同一人と確認する=個人を識別する目的の番号である場合は、個人情報の厳密な保護が条件となるべきだがa.防禦システムを強固にすることと使い勝手の背反、b.厳密な防禦を構築しても絶えず脅かす侵入者が存在する可能性、c.従事する個人が意図を持って侵害する場合には防禦システムは無力であること、などにどう答えるか ③番号を利用して社会保障の負担と給付を個人単位で管理する目的で個人勘定を設定することは社会保障の理念に反し、認めることはできない。