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退職者連合、年金・医療・介護について見解を決定

2011年12月 6日 14:40

2011年7月に閣議報告された社会保障と税の一体改革成案は、その後関係審議会の検討を経て政府・与党調整の上、まとまった事項から法案化・予算措置をして実行に移すとされています。

退職者連合はこのうち年金と医療・介護について検討し、11月16日の幹事会で以下の見解を決定しました。連合との意見調整に努めながら、具体案の設計、法案審議、予算審議の過程を通じて政府・与党に意見反映するよう努力しています。


年金制度の改革論議に係る退職者連合の対応

  

                         2011年11月16日 退職者連合幹事会

「改革論議が年金部会で始まる」

本年7月に「政府・与党社会保障改革検討本部」(本部長:総理)において「閣議報告」という形で決められた「社会保障・税一体改革成案」の年金制度に係る改革案は、①新しい年金制度の創設、②現行制度の改善、の二本柱から成っている。

新しい年金制度の創設では、「所得比例年金」と「最低保障年金」の組み合わせからなる一つの公的年金制度に全ての人が加入する制度に、現行制度の改善では、①高所得者の年金給付の見直し、②マクロ経済スライド制の見直し、③支給開始年齢の更なる引き上げ、等があげられている。

これを受け、改革案の策定に向けた論議が8月26日より社会保障審議会・年金部会で始められ、来年通常国会への法案提出に向け年内にもとりまとめされる予定になっている。

「改革論議への基本的スタンス」

年金制度は超長期の制度であり、受給者にとっては生活の基盤を成すものある。それ故、加入者・受給者にとって安心・信頼に足る制度としての機能化と、社会・経済状況や就労環境の変化に整合した持続可能な制度への不断の改革が必要と考える。従って、改革案の検討に当たっては、広範な世代からの意見聴取とその議論をもとに世代間の合意形成が前提になると理解している。

改革案には、これまで私たちが主張してきた内容が含まれているものの、一方で受給者として受け容れがたい課題や、保険制度のあり方として疑問をもつ内容も散見される。 以下、検討がすすめられている課題、とりわけ既裁定者に関わる部分を中心に一定の考えを示し、部内議論とその実現にむけた運動を推進することとしたい。

課題1.高所得者の年金給付の見直し

                

(1) 「高齢者の老齢基礎年金について、国庫負担相当額までを限度に減額」

<内 容> 税で賄われている基礎年金の二分の一について、所得に応じて減額しようとするもの。試算では、年収1000万以上から減額を開始し、1500万以上は公費負担分全額としている。

<退連の考え方> 受給者の立場から減額を歓迎することにならないが、年金は生活保障の仕組みであって積立貯蓄ではない。高所得の基準にもよるが、低所得者層への対応の原資とするなら、制度維持を含め税負担分についてのクローバック(所得に応じて基礎年金を減額すること)は、一つの手法として理解できる。

(2) 「公的年金控除の縮減」について

< 内 容> 高所得者の年金給付見直しのもう一つの方法として、所得税の公的年金控除を更に縮減しようとするもの。年金の一部減額が財産権との調整で困難性を伴っていることから代替策として発想されている。

<退連の考え方> 2004年税制改正では老年者控除を廃止し、最低保証額:140万円を120万円に、定額控除:100万円を50万円に減額、加えてこれによる諸保険料への跳ね返りが年金受給者の生活を直撃している。私たちの主張に応え民主党は2009年総選挙マニフェストでその復元を掲げ政権交代を実現した。この公約を実現せず、逆に更なる控除縮減を検討する姿勢は到底容認できない。将来、体系的税制改革論議の中で控除の課題が論議されることは否定しないが、それはマニフェストを一旦実現した後になされるべきと考える。

課題2.在職老齢年金の見直し

                    

「調整限度額の引き上げ」

< 内 容> 在職老齢年金について、60歳代前半の者に係わる調整限度額を60歳代後半の者と同じようにしようとするもの。現在は、60~64歳は賃金と年金の合計額が28万円を上回る場合、賃金の増加2に対し年金額1を停止、65歳以上は賃金と年金の合計額が46万円を上回る場合上と同じく停止(高在老)することにしているが、60歳代前半の者の就労意欲を殺がないよう高在老に統一する考え方。

(被用者年金の一元化が実現していない現在、共済年金は60歳から高在老と同じになっており、厚生年金がこれに追いつく形になる。)

<退連の考え方> 社会参加として就労する高齢者にとって歓迎すべき考え方。財源は保険料なのでその負担に理解を得ることが条件になる。また、後述する年金の支給開始年齢引き上げの条件に位置づけられているが、支給開始年齢はそれとして十分な検討が進められるべきと考える。

課題3.マクロ経済スライド制の見直し

(1) 名目下限額を下回る自動調整

<内 容> 現行のマクロ経済スライドは、2004年制度改正で従来の給付固定を保険料固定に切り替え、給付抑制の手段として導入された。年金額上昇抑制に働き、名目年金額の引き下げには働かない仕組みのため、デフレ経済下の賃金引き下げのもとでは年金の価値が上がり所得代替率が上昇した。そのため、調整率(被保険者の減少分0.6%、平均余命の伸び分0.3%、計0.9%)による名目給付額の引き下げを意図するもの。

<退連の考え方> 保険料固定を前提にすれば給付抑制制度は不可欠で、私たちは現行マクロ経済スライド制を歓迎していないが負担と給付をバランスさせる一つの手法と考える。但し、名目年金額の引き下げに及ぶ見直しは受給団体として受け容れがたい。

(2) 「物価スライド特例水準の解消」

< 内 容> 2000年~2002年の3年間の物価下落(0.3+0.7+0.7=1.7)を年金に反映させなかったことによる年金の水準(物価スライド特例水準)と本来水準の差は、2009年に加わった0.8と合わせ2,5%となっている。これを3年間で解消するため年金を減額しようとするもの。そして、その後に(1)の0.9%削減を意図している。

<退連の考え方> 一般的に年金額は物価スライドすべきであり、本来水準と実水準の差が 長期に存続することは不自然ではある。しかし、特例水準は受給者が制度変更と一体の経過措置として受け容れた経過があり、尊重されるべきである。

  

(3) 基礎年金へのマクロ経済スライドの適用問題

<退連の考え方> 基礎年金は定額保険料による基礎的な生活保障として位置づけられている。私たちは、この基礎年金にはマクロ経済スライドは適用すべきでないと主張してきた。部会審議では、適用除外は高所得者の給付抑制と逆行するとの意見もあり我々の求める方向は示されていない。高所得者は前出のクローバックで対応し、基礎年金には適用をやめるべきと考える。

課題4.最低保障機能の強化について

(1) 低所得者等への加算措置の導入

<内 容> 低所得者である老齢厚生年金受給者に対し、基礎年金額を定額又は定率で加算しようというもの。

<退連の考え方> 低所得で低年金の高齢者に対して社会的に支援することは不可欠な施策である。しかし、社会保険である年金がそれを担うことには、制度的に妥当か疑問を持たざるを得ない。実施すれば、加算を期待して保険料納付率の低下等も懸念され、保険としての年金とは別途の施策で実施すべきではないか。

(2) 受給資格期間の短縮

<内 容> 40年間加入した場合に標準的な額の国民(基礎)年金を受け取ることができ、例外的に25年以上加入していれば加入期間に応じた年金の受給資格を得るという現行制度を改め、資格期間を10年に短縮しようとするもの。

<退連の考え方> 我が国は強制加入の公的年金制度をとっており、低所得者には免除期間を資格期間に算入させるなどで、生活に資する金額に達する年金給付を目指してきた。資格期間を短縮すれば、10年を超えた時点で納付意欲を失わせるなどにより、短期間分の低年金者層を大量に作り出しかねない。加えて、制度改定前の無年金者に遡及させるかどうかで混乱も想定される。

我が国と異なり任意加入である諸外国の資格期間を模倣するのではなく、可能な限り基礎的生活保障に足る年金額となる加入期間を重視すべきではないか。

課題5.第3号被保険者制度の見直し

  

<内 容> 保険料を支払わずに基礎年金の受給資格を得る専業主婦(夫)-第三号被保険者-について、第二号被保険者が納めた保険料の半分はその被扶養配偶者が負担したものと取り扱い年金を分割するもの。基礎年金は現行通りそれぞれ受給、厚生(共済)年金は現行額の半分ずつを夫・妻が分割受給する(世帯では現行と同額)。

「夫婦共同負担=二分二乗方式」

< 退連の考え方> この方式では保険料総額・給付総額は現行と変わらず、不公平感は解消されない。また、この方式をとると第2号被保険者死亡の場合、従来の遺族年金額が保障されないなどが懸念される。本来は、年金保険・被用者医療保険共通で、個人単位の制度とすべきだが、それまでの間配偶者・扶養家族分の割り増し保険料等を負担することが、保険原理に近づける方法ではないか。

課題6.支給開始年齢の引き上げ

<内 容> 長命社会に対応するため、公的年金の支給開始年齢について「三つの例」を示し年齢を引き上げようとするもの。

例1:現在3年に1歳ずつ65歳まで引き上げる課程にあるが、このスケジュールを2年に1歳引き上げる等前倒しする。

例2:現在の引き上げが終了した後、更に同じペースで68歳まで引き上げ、併せて基礎年金も68歳まで引き上げ。

例3:例1で前倒しを行い、更に同ペースで68歳まで引き上げ。

<退連の考え方> 支給開始年令の新たな引き上げは、それに先立つ雇用確保が前提になるが、経営側は定年延長や高齢者雇用に慎重な姿勢を示しており、条件整備面が課題。いずれにしても、基本的に現役組織の判断を尊重したい。

課題7.短時間労働者への厚生年金適用拡大

<内 容> 短時間労働者に報酬比例年金を適用することについて、前政権下でも長時間に亘る検討がなされた。その際まとめられた法案は、事業主負担を避けようとする経営側の強い抵抗と、標準報酬の下限を下回る賃金労働者の保険料設定という制度的課題の結論が得られず混乱し、結果的に従業員300人未満企業の事業主に適用を猶予するなど極めて限定的拡大案に止まった。

<退連の考え方> 事業者は人を雇用する以上、社会保障にただ乗りしないことが求めら れる。それが容認できない事業者は退場すべきと考える。

全ての被用者は所得比例年金に加入する。但し短時間労働の結果手取り賃金が低い労働者は年金保険料を負担することが困難な場合もあるので、一定の基準に満たない労働者は「所得比例保険料を雇用主負担のみ徴収し、この期間については基礎年金+二分の一所得比例年金とする」制度とする。これにより、標準報酬下限問題は解決する(参考:ドイツ僅少労働制年金)。国民年金との関係は二分の一事業主負担があれば大半の労働者の場合基礎年金保険料負担は可能になる(なおかつ保険料が負担できない所得であれば免除措置等も考えられるが、それは年金問題というより適正賃金の課題といえよう)。

課題8.被用者年金の一元化

<内 容> 被用者年金の一元化は、前政権の下で法案がまとめられたが、「新たな年金制度の創設」を主張する民主党の反対により審議されず廃案となった。新政権のもとで改めて取り上げられ、関係省庁の協議を経て案を策定することが予定されている。

< 退連の考え方> 被用者保険の一元化については、①長期・短期・福祉の三事業の一体的運営、②積み立て資金の集中リスク回避、③現行共済組合の民主的運営システムの維持、のため共済組合を存続させる。また、一元化後の給付につては、①既裁定共済年金の追加費用削減を行わないこと、②共済年金職域部分を廃止する場合は、これに代え民間の企業年金等の水準を正確に反映した制度を設けることが前提、と考える。

      

医療・介護制度の改革論議に係る退職者連合の対応

               2011年11月16日・退職者連合幹事会

0. 社会保障と税一体改革

(1) 7月に閣議報告された一体改革成案は社会保障審議会の各部会を中心に具体化の検討が開始されている。医療は診療報酬について中央社会保険医療協議会・制度について医療保険部会、介護は介護報酬を検討している介護保険給付費分科会と再開された介護保険部会で審議されており、それぞれ診療報酬・介護報酬・予算に反映すべく速いペースで進行している。また、制度に係る事項は2012年春の通常国会に法案提出をめざすとしている。

(2) これらには推進すべきテーマがある一方、市民の権利と相容れないテーマもあり、検証が必要である。

(3) 関係審議会等では生活保護・障害者福祉についても検討されており、総合的に対処すべきであるが、ここでは医療・介護制度について対応指針を提起する。

(4) 対応の視点は、「積極的社会保障を否定する費用負担拒否論(税・保険料)」、「給付抑制論(その手法としての個人勘定)」、「市場化論(公的皆保険の否定)」に立脚する制度改定を許さない、ことを重視する。

1. 医  療

(1) 高齢者医療制度

<動 向> 高齢者医療制度の見直しについて、政府は「高齢者医療制度改革会議」のまとめを基本としつつ、関係団体から様々な意見が出ていることから、更なる検討・調整をするとしている。

<退連の考え方> 「高齢者医療制度改革会議」で時間をかけて審議して到達した内容を速やかに法案化、成立・施行することに集中して取り組む。

(2) 診療報酬改定

<動 向> 中央社会保険医療協議会は2012年の診療報酬改定にむけて協議を進めている。今次改定は6年に一度の介護報酬との同時改定となり、両制度の連携を財政的に裏打ちする機会とされている。

<退連の考え方> 高齢者医療制度改革に関して提起した「救急・周産期・小児科医療をはじめ医療崩壊を防ぐため、医療費総額を引き上げる。これを裏打ちするため診療報酬を引き上げる」ことを主張する。

(3) 高額療養費の見直しと受診時定額負担

<動 向> 社会保障審議会医療保険部会では高額療養費の見直しと受診時定額負担をセットで検討する考え方が提起された。①高額療養費は年間上限額を設定して月計算の問題点を緩和しつつ、一般所得者の区分をより細分化して中低所得者の負担を軽減しようとするもの。②見返り財源として「受診時定額負担(100円)導入」「病院・診療所の役割分担を踏まえた外来受診の適正化」が提起されている。

<退連の考え方> ①これまで高額療養費について「簡素で患者が利用しやすい制度に改めること、所得区分は低所得者を除き一般に統一し、定率1%項を廃止すること、月単位の医療費計算を改善する」ことを主張してきた。これを基本に応能原則・負担軽減・制度の簡素化・必要財源の確保等を考慮して対処すべきことを主張する。

②「受診時定額負担(100円)導入」は低所得者配慮をするとの条件はついているが、高齢者を中心に受診抑制をもたらすものであり、過去の自己負担割合改定時の政府約束にも反するもので同意できない。

③「病院・診療所の役割分担を踏まえた外来受診の適正化」はフリーアクセスを妨げるもので同意できない。

2. 介  護

制度改定は2011年法改正で一区切りとなったが、多くの項目で両論対立が解けず折衷的な到達点となった。生活援助の充実を求める利用者側からも、「給付の重点化」を標榜して低要介護度者切捨てを主張する側からも不徹底さが指摘されていた。

これらの議論は介護報酬改定を審議する社会保障審議会介護給付費分科会に舞台を移して継続されており、退連の主張反映が不可欠である。

他方、政府は一体改革の具体化を図るためとして、異例のことながら社会保障審議会介護保険部会を10月13日から再開して、12月に新たな制度改革をまとめ12年通常国会にはかる動きを示している。

(1) 従事者の処遇改善

<動 向> 2011年度までの時限措置である保険外付けの「処遇改善交付金」について、介護労働力需給の改善効果を維持するため、効果が持続するよう条件付きで介護報酬に組み入れるなどの方策を検討している。

<退連の考え方> 基本的には保険収支の中でまかなわれるべきだが、過渡的には適切な保険外公費負担が必要である。2012年度から介護報酬に組み込むことは、制度の実効性と保険料負担の両面から避けるべきである。(大半の介護職場で労働組合を形成し、健全な労使交渉による賃金決定・相場形成を実現することを速やかに実現するよう努力すべきであり、この段階では、外付けは解消されるべきである)

(2) 生活援助

<動 向> 重度化予防に効果のある給付への重点化という表現で、生活援助サービス縮小・介護予防を保険給付から除外する根強い主張がある。保険者の判断で介護給付と予防給付を自治体が実施する「介護予防・日常生活支援総合事業」に移行することも可能とされた。

<退連の考え方> 生活援助は要支援者・軽度の要介護者の生活に不可欠なもの、重度化予防の観点からも必要。財源論で生活援助を切ることは制度発足時の介護の社会化に反する。機械的に同居者の存在をもって利用を排除した過去の運用は誤っている。

「利用者の実態と必要性を重視した保険給付」に徹するマネジメントこそが求められる。

「介護予防・日常生活支援総合事業」に関しては、少なくとも法改正時の参議院厚生労働委員会付帯決議「介護予防・日常生活支援総合事業については、その創設においても要支援認定者が従来の介護予防サービスと同総合事業を選択・利用する意思を最大限尊重すること。又、国として財源を確保し、各市町村のニーズに応じて適切に実施するよう努めること。」を履行すべきである。

(3) 介護施設の重点化

動向=軽度者の施設入所を抑制するため、施設利用料の引き上げが検討されている。

<退連の考え方> 軽度者の在宅生活を可能にする条件整備を抜きに、経費負担によって施設から排除することは本末転倒である。

(4) 「1号保険料の低所得者保険料軽減強化」「2号被保険者による介護納付金の総報酬割り」

<動 向> 費用負担の能力に応じた負担との強化と低所得者への配慮として、上記二つの方策が検討されている。

<退連の考え方> 応能負担の原則から歓迎。

※ 昨年の部会で議論された「低所得者補足給付の要件強化」「多床室利用者室料負担」「高所得者・軽度者2割自己負担」「ケアマネ支援自己負担1割導入」が再浮上することは認められない。

※ 介護納付金については、高齢者医療にかかわる医療保険者の拠出分・基礎年金保険料と合わせて医療保険とは別の「連帯基金」として労使が負担することとし、医療保険からの支出をしない仕組みとする提言を真剣に検討すべきではないか。これにより保険者の全面的自己コントロール、拠出者と保険給付の非対応という課題は解決する。

(5) 介護報酬の地域区分の適正化

<動 向> 介護報酬の地域区分を国家公務員俸給の地域区分と共通にすることを検討している。

<退連の考え方> 合理的に実態を反映するものとすべき、可能な限り諸制度は同じ基準によるべき。

※ 分権改革の論議の中で、社会福祉施設建設に当たって住民投票を要件とすることが検討されているやに聞くが、多くの地域で「迷惑施設」論が払拭されていない中では基盤整備の妨げになる危惧がある