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物価上昇でも本年度の年金額は上がらず ―物価スライド特例と相殺―

2009年2月 5日 10:35

 厚生労働省は1月30日に平成21(09)年度の年金額について前年と同額とすることを発表した。

 この基礎になったのは総務省が同日発表した平成20(08)年平均の全国消費者物価指数の対前年比変動率で、1.4%であった(総務省は例年原則として1月26日の属する週の金曜日にこのデータを公表する慣行となっており、厚生労働省の年金額発表もこの日に行われることが多い)。

 一方、名目手取り賃金変動率(平成17年度から19年度の実質賃金変動率等を基に算出)は0.9%で、消費者物価上昇を下回った。この場合、年金額改定は低いほうの賃金変動率で改定することと決められており0.9%が今年改定を必要とする高さとなる。

 しかし、99年から01年までの間に物価が下がったが年金を据え置いた特例分1.7%(物価スライド特例)を吸収し終えてから実際の改定をするという定めになっているので、今回年金引き上げはない。いわば、1.7%の貸しのうち0.9%を取り返し、あと0.8%の貸しが残っているという政府側の整理である。退職者連合は物価スライド特例の廃止を要求しているが、今年は実現せず物価上昇があっても年金の引き上げはないという発表となった。
また、適用の有無が注目された「給付額抑制の手段であるマクロ経済スライド」による調整は物価スライド特例が解消されてから発動することとされているので09年度は行われないこととなった。