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退職者連合、医療制度改革の主張をまとめる

2010年3月17日 10:14


後期高齢者医療制度を廃止し、市民が納得する新たな制度を検討するため昨年11月に設置された「高齢者医療制度改革会議」が回を重ねている。
関係団体・委員は、現制度発足以前からの主張や、発足後の問題意識を基礎にそれぞれの意見を述べているが、制度・財政負担のあり方について大きく分岐している事項もある。
退職者連合は2010年3月8日の医療・福祉専門委員会で、現制度の問題点を速やかにかつ円滑に解決するため、改革会議に臨む主張を以下のようにまとめた。

《前提とする考え方》

1. 公的国民皆保険を持続させる
2. 国際的に見て低い水準の医療費総額を増額し、供給体制を安定させる。
3. 事業主負担を含む保険料を重視し、税との適切な組み合わせで財源を確保する。
4. 年齢による別制度としない。診療や健診について年齢による区分をしない。
5. 制度間の均衡と整合性が増すよう、制度改革の機をとらえて可能なことから改革する。
6. 中長期的展望を持ち、これにつながる段階的改革を目指す。
制度変革と移行に当たっては混乱を最小限にするため、被保険者の理解と納得を重視する。

<説明>
*1.-「保険外診療」・「再分配を伴わない民間保険」を重視して、医療サービスは所得に応じて利用する社会を目指す市場原理主義者の意見に与しない。
*2.-負担を軽くするためには医療供給体制が崩壊してもやむなしとする意見に与しない。いわゆる濫診濫療や、医療機関の倫理崩壊に対しては医療費問題ではなくその次元で対処すべきである。
*3.-事業主の社会保険料負担は国際的にみて低いにもかかわらず、更にその引き下げを主張する意見に与しない。
*5.6.-現行制度維持の意見、混乱を伴う急激な抜本改革を主張する意見の双方に与しない。

《具体的課題》
供給体制と診療報酬
救急・周産期・小児科医療をはじめ医療崩壊を防ぐため医療費総額を引き上げる。これを裏打ちするため、診療報酬を引き上げる

被保険者・保険者
1. 職域保険(健保・共済)と地域保険(国保)は当面分立とする。
2. 保険制度を年齢で区分せず、75歳以上を含む全年齢が本人・世帯主か被扶養者として属性に応じて国保か職域健保に加入する。そのうえで65歳以上の高齢者医療費勘定を設けて財政調整する。
3. 国保の保険者は都道府県とする

<説明>
*1.-白紙に絵を描くのであれば属性を越えた一体の被保険者集団もありうるかもしれないが、わが国の医療保険成立史と運営の現状、一元制度への移行に伴う諸前提や困難を考慮すると、当面分立とすべき。とりわけ職域保険の運営の民主制・事業主負担を含む強固な保険料調達力は、十分な代替の仕組みができない限り維持すべきである。
国保関係者を中心に主張されている医療保険全面一元化は長期的課題としては否定しないが、速やかかつ円滑に改革を進めるべき今次検討の出口ではない。
*2.-リスクの高い高齢者のみを被保険者とする保険集団は、保険外財政を投入しない限り、給付抑制・保険料負担増のいずれかに陥る(鉢植え・立ち枯れ)。年齢で区切った別制度論をとらず、現在の前期高齢者制度を後期高齢者に及ぼす形とする。
(この考えをとると、後期高齢者医療制度で芽が出た社会保障の世帯単位から個人単位への転換は元に戻るが、個人単位化は他の領域とあわせて総合的に検討すべき課題である。)
*2.-医師会の「75歳以上扶助型別制度」、健保連などの「65歳以上別保険制度」意見をとらない。65歳以上別制度論は現在の「後期高齢者制度=ハイリスク集団のみによる単独保険」を前期まで拡大するもので、結局後期制度の矛盾を薄めた形で前期に拡大するだけである。その結果は若年者保険料とりわけ事業主負担を抑え、高齢者の負担増・受診抑制または全国民の(消費)税負担に転嫁することにつながる。
*3.-多くの高齢者が加入する国保は現在の市町村規模では維持が困難と思われる。保険者にはリスク分散・大数の法則(大規模化)と効率的運用(適正規模)の要請があり、当面これを両立させるためには都道府県が相応しい。
より小さい医療圏や、より大きい道州規模の意見もありうるが、定着した行政としての都道府県が現実的である。
*3.-過渡的に後期高齢者医療広域連合を改組して国保の保険者として活用する場合は、
被保険者・費用負担者などの当事者参画が皆無に近い現状を抜本的に変えることが条件になる(制度上はともかく広域連合議会の実態は当事者参画ゼロといわざるを得ない)。
費用負担
1. 事業主負担を含み財源調達力が高く、加入者の権利意識とマッチする保険料を重視し、国際水準を念頭に一定の引き上げを図る。
2. 税は、低所得者の保険料減免・患者一部負担金の軽減および高齢者医療費勘定、国保の制度維持に集中して増額投入する。
3. 65歳以上の患者の一部負担金は、保険の助け合い原則に基づき所得に拘わらず1割とする。

<説明>
*1.-進行する高齢化と医療技術の発達は、国民皆保険・政策的公定価格である診療報酬のもとでも、なお医療費の増加をもたらす。これを賄う財源は①高齢加入者の保険料、②若年加入者の保険料、③事業主の保険料、④税、⑤患者の一部負担金である。
(およそ 保険料50% 税35% 患者負担15%)
医療保険料国際比較:ドイツ14.6%、フランス13.85%
日本 協会健保8.2%・組合健保平均7.31%(最高9.62%、最低3.12%)
*2.-高齢者医療費勘定への公費投入は、65歳以上分・75歳以上分・その他の選択肢があるが、65歳以上の医療費の一定割合を公費負担とすると必要財源規模が過大で国保制度維持の財源等を奪う危惧がある。現状は75歳以上医療費の5割を公費負担。

財政調整
65歳以上の医療費について高齢者勘定を設け、現在の65~74歳を対象とする前期高齢者医療財政調整を75歳以上にまで拡大する。
職域保険の納付金計算は、納付総額を総報酬で割って率を出し、その率によって個別組合の納付額を計算する。

<説明>
*世代間支援を抑制する意図で主張される「年齢による別制度」ではなく、高齢者勘定による財政調整とする。世代間負担ルールが不明確になる、若年者負担が別制度より大きくなる可能性などの批判が想定されるが、保険の助け合い原則を徹底した全面的一元化と比較すれば現実的改革である。
*職域保険と地域保険間の年齢リスク調整を回避する意図で主張される「職域の突きぬけ方式」ではなく、両者間の年齢リスクを調整するもの。突きぬけ方式には国保連帯が欠けること、移行が困難なこと、長期勤続男性中心に偏るなどの弱点が指摘されている。
*高齢者勘定の範囲は、①現在の前期高齢の始期、②年金支給開始、③介護保険の始期な
どとの整合性から65歳を下限とし、後期高齢者医療を廃止するため上限なしとする。
*現行前期高齢者財政調整の仕組み
各保険者の納付金(交付金)=(当該保険者の前期高齢者給付費+前期高齢者に係る後期高齢者支援金)×前期高齢者加入率の全国平均/当該保険者の前期高齢者加入率―(当該保険者の前期高齢者給付費+前期高齢者に係る後期高齢者支援金)
(プラスなら納付、マイナスなら交付)
*保険者ごとの応能負担化・職域保険内再分配をはかるために職域保険の納付金を率計算とする。これにより少なくとも納付金に関しては賃金単価の低い健保組合は高い組合との間で再分配がなされ、組合の持続性が高まる。

給付
診療や健診について年齢による区分をしない。

<説明>
*後期高齢者医療制度の「終末期医療」「慢性疾患包括払い」「健診の放棄=旧法の実施義務を努力規定(当初案ではそれすらなかった)に変更」は当事者の怒りをよんだ。仮に「終末期医療あり方」「一部診療項目包括払い」を検討する必要があれば、年齢ではなく病名・症状等を根拠にすべきである。
また、健診・保健指導は後期高齢者医療制度が行っている「基準による脅迫」ではなく、「目安で気付きを促す」ものとすべきである。

制度間整合
1. 国保保険料賦課上限を職域健保と均衡するよう引き上げる。
2. 職域健保保険料に被扶養者数に応じた割り増し保険料を設定する。
3. 被雇用者の職域保険加入を徹底する。
(*国保組合のあり方について関係者と十分協議して検討する)

<説明>
*1.-応能保険料で国保内の再分配を強める。職域から事実上の調整を受ける側の負担が職域より低いと理解が得られない。
*2.-高齢者の相当部分を被扶養者として再び職域健保に迎え入れるに当たって、従来からの懸案であった割り増し保険料を導入する。個人保険料国保の人頭割りとの均衡。
*3.-国保現加入者の相当率を占める被雇用者の職域保険加入を徹底すべきである。事業主が年金・医療保険とも国年・国保に押し付けて社会保障にただ乗りする不安定雇用・「雇用流動化」は是正が必要である。