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<別添1>

2015年度社会保障制度等に関する要求 退職者連合

1. 持続可能な社会保障制度

社会の安全と安心、一人ひとりが尊厳を基盤に、だれもが必要な時に必要な支援を受けることのできる社会、「人間の安全保障」が完備した社会を作るとともに、社会保障給付のあり方は、制度の特性に応じて丁寧かつ慎重に検討すること。
◇ 政府は、2020年度までに国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を目指し、2018年度までに社会保障費の自然増額を3年間で1.5兆円程度に抑制する考えを打ち出している。それが実施されれば、社会保障費は各年ごとの自然増が半分以下に抑えられ、各種給付が一律に大幅減額されることとなり、社会保障制度そのものの存立が脅かされることになりかねない。

2. 社会保障教育の推進

「社会保障教育推進に関する検討会」報告をもとに、厚生労働省と文部科学省が連携して正しい社会保障理解を進める教育を体系的に推進すること。
◇ 社会保障に関する正確な学校教育の不足が、事実をねじ曲げる「理論」や誤解にもとづく制度不信、過剰期待などを生み出している。また、社会科教育において新自由主義的「経済理論」の立場から社会保障充実を批判する集団がある。これらに対して、再分配による安定した社会をめざす社会保障の意義を明示した教育を実施する必要がある。(別紙概要参照)

3. 短時間労働者への被用者保険適用拡大

短時間労働者への被用者保険の適用拡大について、2016年10月施行予定の5要件を前倒しで見直し、速やかにかつ抜本的に拡大すること。また、必要に応じて「僅少労働年金」を参考にした制度を導入すること。
◇ 短時間労働者に対する厚生年金や健康保険の適用拡大は、社会保障制度の持続・安定に寄与するのみならず、正規・非正規労働者の処遇の均等化・社会保障のセーフティネット強化に加え、国民年金未納解消にもつながる最重点課題である。そのためにも短時間労働者を多く雇用する事業主は、雇用に伴う社会的責任を果たすべきである。

4. 年金制度について

(1) マクロ経済スライド調整の名目下限方式堅持
マクロ経済スライドによる調整にあたっては名目下限方式を堅持すること。また、基礎年金はマクロ経済スライドの対象外とすること。
◇ 社会保障審議会年金部会等では、デフレ下で調整が行われなければ、その分だけ将来世代の年金額が抑制されることになるとして、デフレ下でも発動出来るように見直すべきだとする意見がある。それは事実上の「名目下限方式」の廃止を意味する。多くの高齢者は年金のみで生活しており、名目下限方式はなんとしても堅持すべきである。
 また、基礎年金はマクロ経済スライドの対象外とすべきである。

(2) 基礎年金拠出期間延長等にかかる選択幅の拡大
①年金受給者の選択権を前提に、基礎年金拠出期間延長及び受給開始年齢選択幅拡大を検討すること。
②在職老齢年金は就労による労働参加率向上を促すようあり方を検討すること。
◇ 少子高齢化が進み生産年齢人口の減少が見込まれるもと、働く意欲を持つ女性や高齢者の労働市場への参加率向上は喫緊の課題である。年金の拠出期間の延長と高齢者の労働参加率向上は、年金受給額増とともに年金財政にも貢献するもので、受給者の選択肢を拡げるよう求める。

5. 年金税制

(1) 公的年金等控除の最低保障額、老年者控除の復元
年金課税に係る控除制度改訂に先だって、「公的年金等控除の最低保障額140万円」「老年者控除50万円」を速やかに復元すること。

(2) 配偶者控除の廃止・縮小は年金世帯の負担増回避で検討を
配偶者控除の廃止・縮小を検討する場合は、年金生活世帯の増税・社会保険料負担増をもたらさない方策を講ずること。

◇ 政府税調で継続検討とされている配偶者控除縮小方向の見直しは、稼働年齢層にとっては雇用に中立な税制という命題と関連するが、年金受給世代にとっては、単に増税と社会保険料負担増しかもたらさない。

6. 公的年金積立金の管理・運用について

(1) 被保険者の利益のための運用
公的年金積立金については、専ら被保険者の利益のため運用すること。

(2) 被保険者代表参加による合議機関の設置
運用方針の検討・決定については被保険者代表が参加する合議機関を設けその同意を得て行うこと。また、合議機関の委員はインサイダーとなる業界構成員を除外するとともに、退任後も一定期間回転ドア型の業界再就職を制限すること。

(3) 公的年金積立金の株式投資比率の拡大撤回
政府が日銀の金融緩和と一体でGPIFに強要した株式投資比率拡大方針を撤回すること。

(4) 社会的責任投資の推進
株式運用投資では国連が呼びかけた「責任投資」を推進すること。

(5) 積立金を活用した奨学金創設の検討
2008年社会保障国民会議で検討課題とされた「年金積立金を活用する奨学金の創設」について、実施方向で検討すること。

◇ (2)について、公的年金制度が国民の信頼に基づき成立していることを考えれば、労使の拠出者の意見を反映させることは至極当然である。
◇ (3)について、政府が日銀の金融緩和と一体でGPIFに強要した株式投資比率拡大方針と、塩崎厚労大臣が強行しようとしている「資金運用ガバナンス」をめぐる業界主導の検討が重大な問題になっているため、改めて要求する。
◇ (5)について、社会保障制度国民会議で当時の宮武剛委員が提唱した「高校生から大学院生までに対して総額2兆円弱の奨学金を積立金から拠出して、日本学生支援機構や国民金融公庫など既存の組織を活用して貸与する」構想。先行世代が次代の担い手を支える、若者の年金への関心を高める、教育費負担軽減による少子化対策、被保険者であることを貸与条件とすることにより、未納・未加入防止効果などの効果を想定した提言である。

7. 本人受給の原則と税・保険料天引きの選択制

公的年金は、全額受給者本人に支給することを原則とし、税・保険料の天引きは本人の選択制とすること。

8. 地域包括ケアシステムについて

(1) 選択可能な統合された医療・介護ケアシステムの確立
地域で、高齢者の状態に即応し、切れ目のない医療・介護ケアシステムとネットワークを確立すること。街づくりと一体でサービス提供体制の基盤を整備し、サービス提供者の連携を実現すること。

(2) 資源の地域編在の計画的な是正によるサービス供給体制の整備
データに基づく地域医療構想・介護事業計画により、医療・介護資源の地域偏在を計画的に是正し、サービス提供体制を整備すること。とりわけ、地域包括支援センターの機能強化と居宅系サービスの基盤整備を急ぐこと。

(3) 人材の育成・確保と財政基盤の整備
地域包括ケアシステム確立のために不可欠な人材を育成・確保すること、そのための財政基盤を整備すること。

(4) 関係者間の合意形成を基本に速やかな推進
地方自治体・事業者・市民と協議し、合意形成を図りながら確実かつ速やかに推進すること。

◇ 進行する高齢化に対応して、医療・介護の切れ目のないケアを用意することは喫緊の課題である。また限られた財源で拡大する需要を満たすために資源を合理的に配分することが不可欠である。この二つの課題に対応する地域包括ケアシステムの整備は時間との競争になっている。

9. 医療制度について

(1) 高齢者医療制度
高齢者医療制度改革会議の最終とりまとめに基づき、後期高齢者医療制度に代わる新たな制度を作ること。

(2) 公的皆保険の堅持
公的国民皆保険を堅持すること。皆保険の崩壊につながる「混合診療」を拡大しないこと。一部例外的な扱いである「保険外併用療養」については近い将来の保険収載を基本とし、厳格に範囲を限定すること。

◇ 新たに設けられる患者申出療養制度は、「混合診療」に道を開くものであってはならず、保険収載(健康保険適用になる)までの間、厳格に範囲を限定された制度であるべきである。

10. 介護保険制度について

(1) 介護の社会化と被介護者の権利保障
介護保険制度を名実ともに介護の社会化を実現する制度とすること。このため被介護者の権利保障とともに家族等の介護者に対する支援を体系的に整備すること。

◇ 介護の社会化理念の再確認とあわせて、介護者(ケアラー)支援を主張。

(2) 認知症対策基本法の制定と社会的損賠制度の検討
①認知症対策基本法を制定するとともに、事業計画を整備し確実に実施すること。
②認知症高齢者に起因する損害について、発生を防止する社会的な施策を整えるとともに、家族に過剰な賠償責任を負わせない方策を検討すること。

◇ 認知症高齢者の鉄道事故賠償責任に関する名古屋高裁の判決のままでは、家族は当事者を監禁するか、常時監視するしかない。一方、自動車運転事故などによって認知症高齢者が加害者となるケースも少なくない。家族に過剰な賠償責任を負わせない社会的制度の構築が不可欠である。

(3) 在宅生活支援サービス基盤の整備・拡充
高齢者が地域・在宅で暮らし続けるために、在宅生活を支えるサービス基盤の整備・拡充を図ること。
① 介護保険と相互補完する位置づけで老人福祉法による施策を再整備・充実して生活支援・健康増進を図り、中軽度者の重度化を防止すること。
② 予防訪問介護・予防通所介護について、新総合事業への移行を撤回し、従来の予防給付に戻すこと。新総合事業移行に関連して示した「基本チェックリスト」を要介護認定申請前段に位置付ける方針は申請権の侵害になるので撤回すること。

◇ 予防給付サービスのうち訪問介護及び通所介護を保険給付から切り離し、市町村による地域支援事業に移行させるための法律は可決された。しかし、制度創設の理念から見てもそれには同意できないので、復元を求める。
また、法律ではないが、ガイドラインで強要しているチェックリストは、専門性を欠く担当者が介護認定請求を侵害する可能性があるので撤回を要求する。

③ 地域包括支援センターの機能を強化するために、直営等の基幹となる地域包括支援センターを設置し、センター間の役割分担や連携の強化を図るとともに、その人員体制の強化を図ること。

(4) 高齢者が安心して暮らせる居住の場の整備
① 特別養護老人ホームの整備・拡充を図るとともに、個室・ユニット型居室の整備等の居住環境の改善を図ること。多床室の入居者負担を増額しないこと。
② 低所得・要介護(要援護)高齢者が安心して暮らせる居住の場を確保するため、養護老人ホームの機能強化と職員配置基準を改善するとともに、量的な整備・拡充を図ること。また一般財源化以降顕著になった市町村の養護老人ホームへの「措置控え」傾向を改善するために、養護老人ホームの財政基盤の強化を図ること。

(5) 介護事業労働者の処遇改善とその検証
従事者の処遇を改善するために介護報酬(処遇改善加算・サービス提供体制強化加算)を改善し、加算が確実に従事者に分配される方策を講ずること。このため、事業者ごとの人件費比率の公開を求めるとともに労働法令違反を一掃すること。

(6) 被保険者の加入拡大
介護保険の被保険者を医療保険加入者に拡大すること。

(7) 企画・運営への労使代表、高齢者団体の参画
介護保険の制度検討やその運営にあたっては、被保険者・保険料を拠出する労使の代表が参画し決定する体制を確立すること。とりわけ市町村介護保険事業計画の策定や地域包括支援センターの運営等への被保険者・高齢者団体の参画する仕組みを構築すること。

11. 生活保護制度

(1) 生活保護基準の復元
2013年8月・2014年4月・2015年4月に切り下げた生活保護基準を復元すること。

◇ 安倍政権は、2013年8月から2015年4月の間に3回にわたって生活扶助基準の引き下げを行っている。引き下げ幅は合計で平均6・5%、最大10%の減額となっている。

(2) 自立支援法は権利保障前提に実効ある運営を
生活困窮者自立支援法について、当事者の権利保障のため自治体と協力して、確実な事業実施を図ること。

12. 「マイナンバー」と社会保障個人会計について

(1) マイナンバーについては、厳格な個人情報保護の下、市民合意が得られた範囲での利用とすること。ナンバーを悪用した個人情報への侵入・改竄・なりすまし犯罪を防止するために万全を期すること。
(2) マイナンバーは個人の特定にのみ使用し、社会保障の負担と給付に関する個人会計とは将来に亘って完全に遮断することを明記すること。

13. エネルギー政策について

(1) 早期完全事故処理と原因の究明・情報開示
汚染水対策を含め福島原発事故の早期収束を図り、事故原因の徹底検証と情報開示を進めること。

(2) 原子力エネルギーに依存しない社会に向けて
原子力エネルギーに代わるエネルギー源の確保、再生可能エネルギーの積極推進および省エネの推進を前提として、最終的には原子力エネルギーに依存しない社会を目指すこと。

14. 積雪・灯油福祉料について

積雪、寒冷地の年金生活者に「積雪・灯油福祉料」等を支給できるよう自治体に対する財政措置を講ずること。

15. カジノ賭博合法化について

賭博を公認・推進することを内容として議員立法が試みられている「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」は、賭博による市民の生活破壊および反社会的勢力による施設内外の支配をもたらす。関係者と協力して、これを廃案にすること。

◇ 賭博・麻薬・売買春は、時代と地域を超えて家計と人格を破壊し、反社会的勢力の資金源となり、そのコントロール下に置かれてきた。そのため、日本の法律は原則としてそれらを禁止してきたのである。公認カジノに依存しなければ成り立たない経済再生や観光産業振興などあり得ない。

16. 審議会等への参画について

当事者主権、社会保障制度の民主的運営のため、日本の高齢者組織代表の一つである退職者連合の推薦する者を社会保障審議会の委員に選任すること。

以  上

低所得高齢単身女性問題に関する政策・制度要求

退職者連合

退職者連合は、低所得高齢単身女性が日々の暮らしにおいて直面している課題解消に向けて、国ならびに地方自治体に対し当面次のとおり要求する。

1. 安心して暮らせる居住の場の確保について

(1) 国・地方自治体は、居住の継続が困難な状態にある低所得高齢者、とりわけ低所得高齢単身女性に対し、一定の質が担保された住居への速やかな入居・転居が可能となるよう住宅の確保に努めること。

(2) 国・地方自治体は、個人情報に配慮し、常に低所得高齢者の住居の種別実態ならびに暮らしの状況把握に努め、低所得高齢者、低所得高齢単身女性が安心して暮らせる住環境の整備を図ること。

(3) 国・地方自治体は、空き家を活用した生活支援サービスと組み合わせて住まいの確保を図ること。

2. 生活保護者の権利保障を守ること

(1) 生活保護法や生活困窮者自立支援法等の恣意的な運用によって生活保護申請者や受給者を委縮させ、申請や受給を断念しないよう対策を図ること。

(2) 生活保護法の「親族による扶養義務化」については、申請書類提出の義務付けなどによって、受給者の抑制・削減にならないよう対策を図ること。

(3) 2013年8月から実施されている生活保護基準の引き下げと、2015年度予算による「住宅扶助」基準の引き下げ、冬季加算の引き下げを行わないこと。

3. 認知症対策について早期に対策をはかること

(1) 国は認知症対策基本法を制定すること。

(2) 国・地方自治体は、認知症の早期発見、初期対応の為の窓口相談など体制整備を急ぐこと。

(3) 認知症の人が住み慣れた地域で可能な限り生活を続けていくための基盤整備を図ること。

(4) 認知症の高齢者を介護する家族の支援体制や、認知症高齢者に起因する事故等損害について、家族に過剰な賠償責任を負わせない方策を検討すること。

4. 社会的孤立や孤独死の防止について

(1) 国・地方自治体は、高齢者の社会的孤立や孤独死を防止するため、地域社会におけるきめ細かな見守りや支え合いの体制整備を急ぐこと。その場合、地域包括ケアセンターや民生委員、町内会、自治会等をはじめ、ライフライン事業者(電気・ガス・水道等)、民間事業者(郵便配達、新聞配達等)などとの連携による効果的なネットワークを構築すること。

(2) 具体的な活動推進に当たっては、個人情報の共有を図ると共に、その取り扱いについては慎重を期すこと。

5. 年齢によらない働く場の確保・拡大について

高齢化社会にあって、健康で働く意欲のある高齢者や、各分野で活用しうる技術・能力を有する高齢者が定年制などによって、そうした意欲や技能を生かし切れていないケースが少なくない。国・地方自治体は、年齢によらない男女の働く場の確保・拡大に努めること。

6. 移動困難者対策について

買い物や通院など日常生活において、移動困難に直面している対策に、国・地方自治体は、「交通政策基本計画」に基づき、公共交通機関をベースとした住民の日常生活における移動手段の確保に努めるとともに、社会保障の一つとして位置付け、切れ目のない移動支援に取り組むこと。

以  上