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2016年度運動方針

2. 社会保障の充実をめざします


(1) 社会連帯に基づく、権利としての社会保障・社会福祉の基礎である、憲法第25条の生存権理念を具体的に実現します。これに逆行する社会保障切り捨て攻撃に反対します。

(2) 生活できる所得を保障する、安定した年金制度をめざします。この立場から納得できない一方的な年金切り下げ、年金課税強化には反対します。
(3) 医療と介護の切れ目ない連携による「地域包括ケアシステム」の整備を求めます。

(4) 公的国民皆保険制度を堅持して、国民全てが必要なとき十分な医療を受けられることを確保するための医療制度をめざします。金のある者だけが診療を受けられる医療の市場化とその先駆けである混合診療のなし崩し拡大に反対します。
 後期高齢者医療制度については困難ではあっても、高齢者医療制度改革会議の最終取りまとめに基づく法改正を求め続けます。

(5) 人間の尊厳を守り、社会的介護を実現する介護保険制度を充実発展させます。「要支援1・2に対する介護給付削除」は強行されつつありますが、その復元を要求して取り組みます。

(6) 生活保護法と保護基準の復元・改善、生活困窮者自立支援法の市民本位の確実な実施を求めます。

(7) 社会保障給付の前提となる財源を確保するとともに、その基盤となる人口政策・雇用政策・経済政策を求めます。
(8) 公的医療皆保険・自主共済・郵貯簡保等を危機にさらすとともに農林水産業に壊滅的打撃を与えるTPP加入に反対します。

(9)「社会保障個人会計」に道を開くマイナンバー>に反対します。

(10) 社会保障に対する正確な理解を普及するために、学校における社会保障教育の充実を求めます。

 これらを実現するため、<別添1>「2015年度社会保障制度等に関する要求(退職者連合)」、<別添2>「地公退15年度統一要求」に基づき運動を進めます。


<社会保障の動向と情勢>

(1) 社会保障と安倍政権

社会保障は、平和・人権の尊重と健全な国民経済を基盤としています。安倍政権は、偏狭な国家主義に基づく人権を無視した戦争をする国への転換、新自由主義的グローバリズムに基づく強欲資本主義に加担する政策を進めています。これらの政策を許し続ければその先には社会保障の崩壊が待っています。
 民主党政権時代に開始された「社会保障・税一体改革」は、12年8月と11月に年金関連法が成立したあと、12月の自公政権移行後、13年8月の社会保障制度改革国民会議報告をへて、13年12月に、「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律」(略称:プログラム法)が成立し、①少子化対策、②医療制度、③介護保険制度、④公的年金制度、の4分野についての改革の検討項目やその実施時期が示されました。続いて医療・介護等に関する実定法である「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案」(略称:医療介護総合確保法案)が14年6月に国会で強行可決されました。19の法律にまたがるその内容には自治退が要求した方向と、認めがたい方向とが混在していました。その後15年の第189国会では、医療保険法の改定が可決されるとともに4月に介護報酬が改定されました。また、この国会では私たちの反対を押し切って法人税減税が強行されました。
 一方消費税は、14年4月から3%増税され、15年10月にはさらに2%増が予定されていましたが、政権の思惑により17年4月に延期されました。自治退は社会保障に必要な財源確保については消費税も選択肢の一つとして真摯に検討してきましたが、安倍政権による「消費税増税を法人税減税の穴埋めにする」ことは決して認めることはできません。
 「社会保障・税一体改革」で検討された事項は、年金の継続検討課題を除いて制度・基準・予算でそれぞれに区切りを迎えましたが、政権は新たに「経済財政諮問会議」「財政審議会」等を用いて新たな社会保障切り捨てを画策しており、監視と反対の取り組みが不可欠です。

(2) 拡大する格差と貧困

傷病や失職、不安定・低賃金雇用、無年金等により生活保護受給者や生活困窮者層が増大しています。

 政府は、連合等の要求により新たに「生活困窮者自立支援法」を制定し、就労・就学支援、住宅や生活支援事業を2015年4月から開始しました。しかし、自立の基礎となる就労促進のためには、企業の雇用改善努力と福祉行政・労働行政の実効ある連携、そのための市町村の実施体制の強化が不可欠の条件です。手当なし残業・生涯派遣・金銭による解雇など雇用・労働法制における労働者権利規定の改悪は不安定・低賃金労働者を一層増大させます。自立支援法を実効あるものにするためには、これ以上の労働規制緩和をするべきではなく、安定的雇用制度の促進・拡充、社会保険の適用拡大こそが必要です。しかし、政府は189国会で派遣労働者を急増させ、かつ生涯派遣から抜け出せなくする派遣法改悪を強行可決しました。また、過労死を多発させる手当なし残業などの労働基準法改悪や、金銭解雇の制度化を進めようとしています。これらにより雇用が劣化することは社会保障の基盤が崩れることを意味します。
 また、政府は生活保護法の改悪に続き、15年4月三回目の保護基準切り下げを強行しました。生活保護制度と基準・運用は憲法第25条の基盤であり、これを掘り崩すことは許せません。
 自治退は、退職者連合が提起する「高齢低所得単身女性」等の社会的課題にも取り組みます

(3) 年金制度

 

年金は6,700万人の被保険者、3,900万人の受給者の権利に直結する超長期の制度であることから、拙速に一部の関係者の思いつきで変更すべきものではありません。
 自治退は2012年の一体改革で取り上げられた年金制度改革課題について主張を明らかにして退職者連合とともに取り組んできました。これらについては12年の一連の年金関連法(「被用者年金一元化法」:8月成立、「年金機能強化法」:8月成立①受給資格期間短縮②基礎年金国庫負担二分の一恒久化③短時間労働者社会保険加入拡大④産休期間中の保険料免除⑤父子家庭への遺族基礎年金支給、「国民年金法等」:11月成立①物価特例水準解消、「年金生活者給付金法」:11月成立)改定で一定の到達点となりましたが、納得できない事項については今後も引き続き問題提起を続けます。また、被用者年金一元化に関連して強行された「追加費用削減」は制度論として誤っていることを指摘し続けます。とりわけ、沖縄について全国水準より長い追加費用期間による削減とされており、沖縄の年金受給者に対する不当な不利益扱いとなっています。復帰法の理念に反する政令は是正されるべきです。
 今後の継続検討課題については、2014年財制検証結果をもとに検討されてきましたが、15年第189国会には関連法案は提出されませんでした。財政検証でオプション試算された「短時間労働者の社会保険加入拡大」「高齢者の就業、保険料拠出期間、年金受給年齢見直し」については促進を図るとともに、「マクロ経済スライド実施方式の見直し」については現受給世代と将来受給世代の受給水準の公平性を念頭に置きつつ名目下限方式の堅持を求めます。また、安倍政権が株価維持・国際金融資本への貢献として経済財政計画に位置付けてGPIFの運用委員を差し替えて保険料拠出者である労使の意見を無視して強行した年金積立金の株式投資比率拡大・ハイリスク運用拡大に反対します。

(4) 地域包括ケアシステム

 

「社会保障制度改革国民会議」は医療と介護の境界を取り払い、病院・施設と在宅ケアの組み合わせによる地域包括ケアシステム整備を提言しました。医療・介護サービスを供給側の都合によるケアから患者・利用者の必要に即したケアに再編成して、地域生活を基軸にしたサービス体系を作ろうとするものですが、その実現のためには、財政基盤の整備、人材養成と確保、データの整備とその的確な活用、医療機関・介護事業者を誘導する仕組みが不可欠で、大きなエネルギーと時間を要します。自治退は、地域包括ケアの実現のために退職者連合とともに、政府、自治体に対する働きかけを進めます。
 しかし、この提言は患者・利用者本位の供給システムづくりという本来の目的に加えて、限界のある財源と社会的資源の制約のもとで急増する需要に対応する方策という側面を持っています。個別の方策によっては負担増、給付抑制など利用者の権利と対立するものが含まれる可能性があります。「医療介護総合確保法案」に含まれた「要支援者に対する介護保険給付カット」のように、あり方からも効果からも誤った施策を排除しながら推進する必要があります。

(5) 医療制度

① 2008年4月に発足した後期高齢者医療制度は、広範な市民の批判を背景に、民主党政権下で「高齢者医療制度改革会議」で検討され、廃止・新制度の創設に向けたまとめが行われました。しかし、法案の提出に至らないまま政権交代となり、「社会保障制度改革国民会議」では“後期高齢者医療制度は制度発足後時間が経過し制度は安定的に受け入れられている”として存続方針とされました。廃止要求を堅持するとともに、内容的に可能な事項から実現することを視野に入れた粘り強い取り組みが必要です。
② 小泉政権以来公的医療保険制度を縮小し、空白を市場に委ねて「支払い能力のあるものだけが医療を受ければよい」という主張が影響力を持ち続けています。この一環として様々な場で年中行事のように混合診療の拡大が主張されており、第189国会では「患者申出療養制度」が可決されました。
 米国政府年次要望書以来、TPP協議でも「保険・医療・教育」分野の市場化と、外国資本の参入自由化が主張されています。医療をアメリカ型の保険資本支配に委ねて市場化すれば、国民皆保険制度は破壊されます。「必要あるものが医療を受ける」公的皆保険制度を堅持するために力を結集することが必要です。
③ 「社会保障制度改革国民会議」は医療提供体制について、偏っていた機能別病床を合理的に再編成するとともに、地域医療重視への転換を図るため、消費増税分を財源として新設する基金と診療報酬により誘導するよう提言し、これをもとに作られた医療介護総合確保推進法が14年6月に成立しました。これにより医療関係では(ア)基金創設、(イ)地域医療構想による提供体制確保、(ウ)人材確保、(エ)事故調査制度などが実施に移されつつあります。これらを実現するためには、計画策定に必要な人材とデータ整備、医師・看護師等の確保とともに、在宅生活を支える介護・福祉との連携が必須の課題となっています。
 これに続いて医療保険制度については(ア)国保の財政運営を都道府県に移行、(イ)後期高齢者医療制度支援金の全面総報酬割化、(ウ)療養範囲適正化・負担の公平化、(エ)医療費適正化、(オ)患者申し出療養制度などについて第189国会に法案が提出され5月に可決されました。(ア)(イ)は私たちの要求と同方向ですが、それ以外では同意できない内容が含まれており、今後の実施段階に向けて引き続き取り組む必要があります。

(6) 介護保険制度

介護保険制度は2025年に団塊世代が後期高齢者世代に到達することを念頭に、社会保障審議会介護保険部会が「給付抑制と費用負担の拡大」を中心内容とした報告をしました。
 これをもとに提案・可決された医療介護総合確保推進法中の介護保険法改正の主要な内容は、「給付の重点化」としては①要支援者の予防給付(訪問介護・通所介護)を介護保険給付から除外し市町村の地域支援事業に移行させる、②特養の入所者を原則要介護3以上に限定、③サービス利用時の利用者負担を合計所得160万円以上は2割とする、④介護施設入所者への食費・居住費の補足給付受給資格に資産要件を勘案する、などとなっています。
 また「サービスの充実」としては、地域包括ケア体制強化のため、医療との連携や認知症ケア体制の整備、地域包括支援センターの機能強化とサービスコーディネーターの配置等となっています。
 自治退は、医療・介護サービスを利用する立場から、①地域包括ケアの推進・医療と介護の連携強化、②病床の機能分化・連携、在宅医療・介護推進のための基金新設、③地域の医療提供体制の計画的整備、④低所得者の介護保険料軽減、等には賛成しつつ、介護保険利用者の権利に逆行する①要支援者に対する予防給付の市町村事業への移行、②利用者負担の1割から2割への引き上げ、③施設入所者への補足給付要件へ資産勘案を加えること、等については反対して退職者連合に結集して取り組んできました。特に予防給付の市町村事業移行については、多くの自治体で退職者組織が反対の申し入れ行動を実施し、結果的には撤回に至っていませんが確実に問題提起の役割を果たしています。
 介護保険制度改定に続き、15年4月には各市町村で第6次介護事業計画が策定・スタートするとともに介護報酬が改定されました。この間僅かずつながら引き上げられてきた報酬は今回4.48%もの引き下げとなりました。政府は処遇改善やサービス充実と相殺して2.27%引き下げと説明していますが、処遇改善加算は従来より加算要件が厳しくなり、活用しにくくなっています。また、予防通所介護の報酬が20%減となるなど基本報酬の減額が顕著です。介護報酬は保険料と直結するため、高ければよいというものではありませんが、負担と給付の折り合いをつけながら「地域・在宅で安心して暮らし続ける」ことを基本に、地域の介護・医療基盤の整備と連携に向けた取り組み、自治体に対する働きかけが求められています。
 また、認知症高齢者の鉄道事故に関してJR東海が家族に求めた損害賠償請求とこれを認めた判決は介護責任を家族に強要する不当なものであり、この撤回を求めます。介護責任を家族のみに負わせるのではなく社会・地域全体が支える仕組みづくりが重要です。政府に対して認知症高齢者に起因する損害について、発生を予防する社会的な施策を整えるとともに、家族に過剰な賠償責任を負わせない方策の検討を求めます。

(7) 「マイナンバー」

民主党政権時代から検討されてきた「マイナンバー」法が2013年5月成立しました。2015年10月に各人に番号が通知され、2016年1月から希望者にカードを配布すると共に、行政手続き利用とされています。番号は道具であり、利用主体と目的によって市民の権利を守るものにも侵すものにもなります。自公政権は「社会保障個人会計」導入論者を重用しており、番号がこれに利用される可能性が高まっています。番号が本人に通知される前の第189国会に金融機関口座での番号通知義務付けをはじめとする機能拡大法案が提出されたことが示すように、現政権には利用範囲を抑制的に取り扱う姿勢はありません。また、民主党政権で検討されていた「納税者権利憲章」には後ろ向きです。もともと、技術的にも人為的にもきわめて困難とされる番号制に関する個人情報保護も自公政権下ではおろそかにされる危惧があり、サイバー攻撃による番号情報の盗み出し、犯罪集団による成りすましなどの多発が想定されます。市民の国家管理を主目的としてルーズな個人情報保護しか用意していない現政権下の番号制施行には反対します。

(8) 新たな社会保障攻撃

安倍政権は財政審議会・経済財政諮問会議などの場を用いて社会保障の給付抑制キャンペーンを開始しています。実現不可能な「上げ潮政策」と、「機械的社会保障縮小政策」をともに退けて、持続可能な社会保障制度のために現退協力して取り組む必要があります。