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2021年度活動方針

  

はじめに

社会・経済の変化に対応する社会保障に

市民と行政が長い時間をかけて作り上げ維持してきた社会保障制度は、その時々の稼ぎの範囲内ですべての人の暮らしが成り立つよう社会的に再分配する仕組みです。日本は2040年頃まで高齢者が増え続けて、人類が経験したことのない高齢者比率をもち、かつその下の年齢にある人口=働き手が減少する国に変わりつつあります。持続可能な経済・財政、子ども・子育て支援と健全な雇用創出、社会保障を賄える財源確保、のどれが欠けても私たちと子・孫・ひ孫の生活は困難を迎えます。また、いわゆる引きこもり問題など、社会から取り残される人を作り出さないための社会的支援体系が必要です。社会保障の機能強化のため全ての社会構成員が知恵と力を合わせるべき時にあり、とりわけ政府には事実を直視して後れを取らない政策を展開する責任があります。

地球環境変動を防ぎ、感染症に耐えうる社会に

 この一年は相次ぐ自然災害と新型コロナウィルス禍で社会と経済が痛めつけられてきました。もとより万能ではない人類は自然との共生を図るほかありませんが、災害を引き起こした気候変動は人類が放出してきた温暖化ガスに主な原因があると言われます。また、感染症については国際連帯による各地域の公衆衛生システム整備を軽視してきたこと、感染症対応の公的機関・資源を縮小してきたことが被害を大きくしました。コロナ禍は収束までに一定の期間かかると見なければならず、特に経済力の弱い市民・地域への打撃は甚大です。地球環境変動を防ぎ、疫病に耐えうる社会を作るために運動を進めます。

社会保障と民主主義を破壊する政権の暴走を許さない

 安倍政権は、2012年の政権復帰以降現在まで一貫して「今だけ・金だけ・自分だけ」を物差しにした政策をとり、社会保障と民主主義を破壊しようとしています。政権復帰後実施した2回の衆院選、3回の参院選の前には社会保障抑制を隠して人気取りキャンペーンを展開し、選挙が終わるや、経済財政諮問会議と財政制度等審議会・未来投資会議等を用いて社会保障を抑制し、国家主義への回帰をめざす反動諸立法の強行を繰り返してきました。  また、日銀に国債と株の大量買い支えを続けさせ、将来の深刻な金融危機の種をまいています。  加えて「森友学園」「加計学園」「桜を見る会」等にみられる行政の私物化、組織的公文書改竄・廃棄、河井夫妻の選挙違反容疑逮捕、カジノ誘致をめぐる秋元司衆議院議員の収賄容疑逮捕、(高知)相次ぐ大臣・副大臣による暴言や与党議員のスキャンダル、非論理的な誤魔化し答弁など、忖度による側近政治の横行と行政の歪曲は政権与党の傲慢・腐敗を示しています。  とりわけ官邸と親密な黒川氏を検事総長に据えて検察を政権の支配下に置くべく、過去の国会答弁を無視した「解釈変更」で氏の定年を脱法的に延長し、加えて公務員定年法改定に検事の恣意的特例定年延長をまぎれこませて提出したことは許せません。法案は反対する市民の声と、検事総長経験者などからさえ異論が出たことに押されて結果的には廃案になり、当事者の黒川氏は常習的賭けマージャンが発覚して辞任、検事総長人事は仕切り直しとなりました。検察自体には人権尊重を基本とする変革が求められていますが、少なくとも時の政権の走狗に堕すことは防がなくてはなりません。  今後計画されているといわれる通信・メール・LINEの傍受、位置情報取得、親書検閲、会話盗聴の合法化、コロナ禍を奇貨とする国民統制のシステム強化などとあいまって国家権力が自由と人権を抑圧するための仕組みが飛躍的に強化されつつあります。  戦後の永い間の保守政権が、まがりなりにも維持してきた民主的合意形成の配慮、節度は現自公政権からは失われています。 こうした中、8月28日に安倍首相が持病の悪化を理由に辞任を発表し、9月16日に自民党内派閥談合による菅義偉(すが・よしひで)内閣が発足しました。新内閣は前政権の継承を標榜しており、周辺に集いつつある人脈を見ても市民生活より企業優先、国際連帯より米国への買弁、改憲を指向する政権運営をうかがわせます。  私たちは、市民の生活基盤である社会保障の維持強化を求めます。私たちは、日本を戦争する国に転換させることを拒否します。改憲策動、強権支配社会を許さず、民主的合意に基づく節度ある社会を求めます。このためにも自公政権打倒、民主的政権作りをめざして取り組みます。

1. 社会保障の充実・公正な税制をめざします

(1) 憲法第25条に定める生存権が何人にも保障されることを求めます。

(2) 社会保障の基盤をなす雇用・賃金の改善と子ども子育て施策の強化を求めます。また、社会保障財源を国債に依存せず、基幹三税・社会保険料により確保することを求めます。

(3) 生活できる所得を保障する、将来にわたって安定した年金制度を求めます。

(4) 医療・介護の連携した提供体制を作るため、地域包括ケアネットワークの整備を求めます。

(5) 必要な時、十分な医療を受けられる公的国民皆保険制度を維持発展させることを求めます。感染症に対抗できる公衆衛生システムの整備充実を求めます。

(6) 人間の尊厳を守り、介護の社会化を実現する介護保険制度の実現発展を求めます。

(7) 健康で文化的な生活を保障する生活保護基準を求めます。

(8) 市民が社会保障に関する正しい認識を持つことができるよう、学校教育における社会保障教育の充実と広報を求めます。

(9) 社会保障給付を賄うに足る税制を確立し、基幹三税の適切な分担と所得の再分配機能を果たす公正な税制を求めます。消費税率改定対策として軽減税率やポイント還元など制度をゆがめる措置をとることに反対します。    また、金融取引税など、途上国の貧困・疾病・格差解消等に充てる国際連帯税の新設を求めます。   これらにより、コロナ禍対策を含む財源を生み出し、際限のない国債の発行と日銀による買取をやめるよう求めます。

(10) マイナンバーの悪用による犯罪を防止するため、運用を監視し必要な措置をとることを求めます。また、マイナンバーと監視機器・システムを結合させることによる国民監視・統制、マイナンバーカードの取得強要や戸籍事務に利用することなど、導入時の原点を変質させる動向に反対します。  

以上の課題を実現するための20年度の統一要求は、厚生労働大臣・財務大臣等に対しては退職者連合要求(別添1)に統一し、総務大臣に対する地公退統一要求(別添2)を付加して全体要求とします。

社会保障制度の経過と情勢

(1) 安倍政権とその後継菅政権は、市場原理主義を奉ずる者たちの操縦に従い、経済財政諮問会議(3ヵ年スパン)・財政制度等審議会・規制改革推進会議及び新設した未来投資会議、全世代型社会保障検討会議などを用いて社会保障抑制政策を続けてきた。その結果、社会的・経済的格差が拡がり消費不足をもたらし、少子化・人口減少が進行し、膨大な公的債務が拡大し続け、経済は成長力を失いつつある。また、基盤強化期間と位置付ける22年度から24年度を統制する骨太方針21の検討が進行している。    他方、これまで蓄積してきた社会保障の理念と制度・財政は政権によって一部蝕まれたとはいえ、市民の財産として私たちの生活の基盤であり続けており、その機能強化が不可欠である。

(2) 雇用・子ども子育て    退職者の多くは雇用・子ども子育ての当事者ではないが、子や孫・ひ孫に安定した生活、それを支える社会保障制度を引き継ぎたいと願っている。足下で言えば、私たちの社会保障給付は現役労働者からの社会化された仕送りで支えられており、その雇用と賃金が給付水準を決めている。    私たちは、現役世代の健全な雇用拡大と、更に次の社会を担う子ども子育て支援充実のため可能な方法で連帯する。

(3) 年 金   

① 年金制度は退職者の経済的生活基盤であり、消費によって地域経済を支える灌漑装置でもある。現在の年金制度は過去のセンセーショナルな「抜本改革」議論に整理をつけ、それなりに安定性と信頼性をもって運営されている。しかし、社会・経済という海に浮かぶ船に例えられる制度である以上海の安定が不可欠であるし、政治による意図的干渉・歪曲から守らなければならない。   

② 第201国会では2019年財政検証とそれに基づく制度見直しにより、2013年社会保障制度改革国民会議が示していた制度安定と将来の給付改善に結び付く現実的で有効な方策が、野党修正案の一部も今後の検討課題に取り入れながら法改正された。     具体的には、「短時間労働者の社会保険加入拡大」、「高齢期の就労と年金受給の在り方」が前進した。しかし前者に関しては経営者団体の抵抗により対象企業規模要件が撤廃に至らず(現行500人以上→100人超:22年度実施、51人超:24年度実施)、後者に関しては「在職老齢年金制度見直し」と「受給開始年齢選択の拡大」は実現したが、「基礎年金被保険者期間延長」は財務省の抵抗により実現に至らなかった。これらは国会付帯決議も活用しつつ立ち止まることなく速やかに実現しなければならない。     「マクロ経済スライドの在り方」については、今次改定に含まれず将来課題とされた。16年の法改定による「賃金低下時にこれと合わせた年金改定」の施行が2021年であり、その状況を見ずに年金額決定方式変更はできなかったとみられる。   

③ 厚生年金積立金を運用するGPIF(年金積立金管理運営独立行政法人)は、国内株式発行額の8%を占める巨大な機関投資家である。一部独自運用部分を行っている共済組合と共に、法が定める被保険者の利益のための運用と、署名した「責任投資原則」に基づき、長期的視点で運用目標を達成することが任務である。     政権の一部にはこれらの資金を株価操作に用いる「官製相場」づくりや、頻繁な売買で金融業界の手数料稼ぎの種にすることを目論むものもいるが、厳しく斥けねばならない。   

④ コロナ禍が経済に深刻な影響を及ぼしている。コロナ禍による株価の乱高下による年金給付への影響が心配されているが、年金積立金は長期運用を基本としていること、および年金給付の約9割は保険料で賄われているため、年金給付への影響は限られている。年金財政は健全な雇用による多数の被保険者によって安定し、年金額は賃上げによって充実するので、コロナ禍による雇用と賃金の悪化を防ぐ運動に全力を集中することが求められる。

(4) 地域包括ケアネットワーク、医療・介護   

① 世界が未体験の高齢社会を迎えた日本は、これまで分立してきた医療と介護を病院・施設・在宅の切れ目のないサービスに体系化した地域包括ケアのネットワークとして結び合わせることが必要になっている。     政権の一部には地域包括ケアを経費節減の口実に利用しようとするものもいるがこれを斥け、患者・利用者本位で充実させるため、医療に関する構想・計画と介護に関する諸計画を共通の目的をもって実行しなければならない。   

② 医療制度について、18年財政審建議を皮切りに多くの医療費圧縮メニューが提起された。中には“現役世代人口と自動連動する窓口負担率”など、政府与党内部からさえ批判されて削除された項目も含まれていた。     その後政府は医療制度の負担と給付の在り方の検討の場を全世代型社会保障検討会議に移して19年末に中間報告を出した。中間報告では「後期高齢者医療の自己負担について一定以上所得のある者に新たに2割負担を導入」と「紹介状無しで大病院受診時の定額負担を拡大する」の二課題が示された。     その後については「20年夏に最終報告、20年秋の臨時国会に関係議案提出」とするスケジュールを示していたが、コロナ禍による作業の遅れから「20年末最終報告、21年国会に議案提出」に繰り下げるとみられる。   

③ 後期高齢者医療制度は発足後11年を超え、問題点を持ちつつも定着し多くの退職者がそれを前提に生活している。     後期高齢者医療制度支援金のため増加する医療保険料負担を嫌う経営者団体は患者自己負担割合を基準1割から基準2割に引き上げることを激しく主張しているが、75歳以上では若い人の4倍医療費がかかる。高額所得者はともかく全ての被保険者の負担を基準2割に引き上げれば多くの患者の受診・受療断念に直結するため、基準1割堅持・一定以上所得のある高齢者の2割負担新設を歯止めとして運動する。   

④ 今次のコロナ禍では、この間政府が「医療の効率化」を口実にして「予め備える公衆衛生」を弱体化させてきたことが混乱を深めた。緊急施策として関係者が速やかな実施を期待した「雇用調整助成金」はスムーズさを欠き、「持続化給付金」支給事務では経産省と電通・パソナなどの受託企業との癒着により必要な時に間に合わない例が続出した。また「対策」として取られた「安倍のマスク」やSNS画像・意味不明の自衛隊機デモ飛行は市民の顰蹙を買い、利権がらみの「Go To トラべルキャンペーン」は市民に「強盗トラブル」と揶揄・批判された。ウィルスとの闘いは現在進行中であり、施策の体系性と優先順位を明らかにして取り組みを継続しなければならない。そのために、保健所や研究・検査機関の拡充と専門的人材の育成確保、PCR検査の大幅な拡充、医療や介護・障害者施設等での感染拡大に備えた人的応援体制、離島における医療提供と救急患者の迅速な搬送体制、病院での防護服・マスク・消毒液・専門医療器材の備蓄、感染症予防のワクチンと治療薬の研究開発などが求められる。かりそめにも、電通・パソナなど一部業者・経産省・政治家の私利のために施策を食い物にさせてはならない。また、権力者が感染症につけこんで、市民管理の仕組みを強化することを許してはならない。   

⑤ 介護保険制度は制度発足時に比べて利用人員と給付費は飛躍的に増加している。これに対する危機意識から18年財政審建議を皮切りに、中軽度者に対する保険給付削減攻撃のほか、自己負担割合の基準1割から2割への引き上げなど多くの介護費圧縮メニューが提起されてきた。     介護は医療に比べて利用期間が長期にわたる。高額所得者はともかく全ての利用者の自己負担割合基準引き上げは利用断念に直結するため撤回を求めてきた。結果的に19年末にまとめられた改革は「補足給付の見直し」と「高額介護サービス費の見直し」の2件にとどまり、危惧した大幅改定は見送られた。また、第201国会には「地域共生社会実現のための社会福祉法改正」(案)の一部として介護保険法も提起されたが、私たちが反対してきた事項は含まれていない。今次の改定は小規模にとどまったが、現行の枠組みの中での保険料負担には限界があるため、近い将来負担と給付の見直しが再度検討対象になると思われる。これらを跳ね返すためにも、連合・退連が要求し続けてきた「医療保険加入者全員を介護保険の被保険者にする=普遍化要求」を実現する必要がある。     21年から23年に係る第八期介護保険事業(支援)計画作りの作業が既に始まっており、実務的には20年中に大勢が固まる。20年夏~秋の当該自治体への意見反映に力を注がねばならない。

(5) マイナンバー    

デジタルガバメント閣僚会議が19年6月4日に決定した「マイナンバーカードの普及とマイナンバーの利活用の促進に関する方針」は、ナンバーを国家による市民統治のシステムと位置づけ、公務員共済組合員と家族に医療保険証としてカード取得を迫るなど強引なやりかたで利活用拡大とカード取得強要を図ろうとしている。またこれと結びつけて個人情報保護法を改定した。    加えてコロナ禍を口実にカード取得と既存預貯金口座の一つについてナンバー登録を求めようとするなど、火事場泥棒的な行動をとろうとしている。    看過すればこれまで反対してきた「社会保障の個人会計」も間近になる。今後の動向を監視し、関係団体と協力して取り組む。  

税制の経過と情勢

(1) 税は社会保険料と並んで、社会保障を支える基本的財源である。我が国の現在の国税は所得税・法人税・消費税を基幹三税としている。紆余曲折はあったが民主党政権時に二段階の消費税率引き上げを軸とする「税と社会保障の一体改革」に関する三党合意が行われた。これにより、社会保障給付を含む国家財政を国債に依存してきた状況を変え、プライマリーバランス(PB)の黒字化目標が合意された。いわば「給付先行型社会保障」を給付負担均衡型、給付改善型に近づけつつ「国債発散(債務が雪だるま式に拡大し抑制が利かなくなる事態)」を回避する道筋がつけられた。

(2) しかし、安倍政権は第一段階の3%消費税率改定は合意された時期に実施したものの第二段階の2%は二回にわたり選挙対策の道具に用いて延期してきた。その結果、社会保障以外の歳出と相まって累積国債発行額は増加し続けPB黒字化・財政健全化は遠ざかっている。これはもとより消費税のみの問題ではなく、18年末の財政審建議さえ指摘したように、「平成期間中の法人税と所得税の減税累積額と、消費税創設以降の累積税収とが相殺」された財政運営に大きな原因がある。

(3) 法人税は、国境を越えた野蛮な資本主義が求める引き下げ要求に屈して、日本を含む各国が競って引き下げており、企業の社会的責任が放棄されつつある。実物経済貿易規模の100倍とも言われる国際金融取引は膨大な利益を上げているにもかかわらず、国境課税はされていない。また所得税は、累進課税の緩和、金融取引所得・金利の分離課税など富裕層優遇が続けられ、著しい不公平感をもたらしている。これらを是正しなければならない。

(4) 単年度税制改革では、18年度に国際観光旅客税・森林環境税の新設、個人所得の給与所得と公的年金の控除額を変更し高所得者増税など近年では多めの改革が実施された。    19年度は、軽減税率(公平・簡素・中立の三原則すべてに反し逆進性対策の機能はない)、消費者・小売店を混乱させ簡素原則に反するポイント還元や、業界が主張してきた自動車諸税の見直しなど、10月の消費税率引き上げ対策のみが突出した。20年度は年金課税、金融所得課税、未婚のひとり親税制、電気・ガス・保険業の外形標準課税などが課題に挙げられていたが、与野党一致した未婚のひとり親税制以外は企業支援が中心となった。

(5) この間の税財政は、「税を集めないで国債に依存する→国債を市場で消化できない→日銀に引き受けさせる→金融への信認喪失」の直前にあるのではないか。その先には、歴史の教訓ではインフレが起こり、消費者、預金者、保険・年金受給権者が政府・日銀の代わりに負担させられることに向かう。

(6) コロナ禍の対策費は、感染拡大防止の果断な対策とあわせて、事業継続や国民生活の必要にして十分な支援と補償ができるような予算措置を取る必要がある。しかし、補正予算における内訳不明の10兆円に上る予備費計上など政権の恣意的行動は財政民主主義を無視するもので論外である。何より政権には対策費の財源とされる国債について、償還財源としての所得税・法人税・消費税等それぞれの引き上げ率・期間に係る財源の全体計画を明示して納税者の合意を得る責務がある。  

2. 憲法改悪反対、戦争法の廃止をめざし、平和と人権・環境を守ります

(1) 平和・主権在民・基本的人権を定めた憲法理念を守り、憲法第9条、第24条、25条の遵守を求めるとともに、憲法改悪に反対します。戦争法・共謀罪法・特定秘密保護法・司法取引廃止を求めます。

(2) 沖縄をはじめ全国の米軍基地・自衛隊基地による市民生活・環境の破壊を許さず、軍事基地の撤去・縮小を求めます。なかんずく普天間基地の速やかな撤去を求めると共に、辺野古新基地建設・高江オスプレイパッド建設及び先島における自衛隊の配備・新基地建設計画の中止・撤去を求めます。    また、米軍オスプレイの日本国内への配備と離着陸、自衛隊のミサイル・オスプレイ購入・配備に反対します。    日本国民の権利を無視した「日米地位協定」の抜本改定を求めます。日本の軍事費急増に反対します。

(3) イージス・アショア配置計画および代替策の敵基地攻撃能力の保有の双方 とも即時全面撤回を求めます。

(4) 平和・核兵器廃絶を求める行動に積極的に参加します。17年7月国連で可決された核兵器禁止条約を日本政府が速やかに批准することを求めます。

(5) 差別意識に基づいて人種・民族・性・性的志向などを口実とする不当な宣伝や攻撃が蔓延しつつあります。政権が拙速に進めた外国人労働者受け入れ政策は、当事者の労働基本権が整備されていないことに加え差別・ヘイトの被害者にされることが危惧されます。    人権尊重の基本理念に立ち、こうした差別煽動の実態を明らかにし、新たな被害者を出さないために、制定されたヘイト防止法も活用しながら法的・制度的・社会的な対策がとられるよう取り組みます。    あわせて社会・家庭・職場・学校等あらゆる場所から多様なハラスメント・ドメスティックバイオレンスをなくし、人権を尊重する社会・環境を築くことをめざします。

(6) 憲法が保障する「個人の尊厳と両性の本質的平等」と「男女共同参画社会基本法」の理念を社会のすべての場面で実現することをめざして、男女平等参画社会実現に取り組みます。その推進にあたっては現存する多くの差別を具体的に取り除くため、様々な場面で男女が共同して民主的な政治・社会の発展に寄与するよう努力します。特に、世界経済フォーラムが報告した政治分野における男女格差で日本が160カ国中144位である現状を変革するために取り組みます。2018年に成立した「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」を実効あるものにするため、政党による自発的クオータ制の導入、両性交互の国会議員比例代表候補順位などを呼び掛けます。

(7) 東日本大震災をはじめ地震・風水害などの自然災害が相次ぎ、被災者の多くを高齢者が占めています。CO2排出規制で原因を減らすとともに、高齢者の被災を最小にするインフラ整備、地域ネットワーク構築を求めます。

(8) エネルギー政策の地方分権を進め、エネルギー多消費型社会構造・生活構造の変革を目指します。再生可能な自然エネルギーの開発・普及をすすめ、温室効果ガス削減を図ります。この立場から、会員に電力自由化を活用し再生可能エネルギー購入への転換を進めるよう呼びかけます。

(9) 原子力発電に依存しない社会をめざし、新たな原子力発電所は建設しないこと、既存の炉は再稼働せず計画的に廃炉とすることを求めて取り組みます。また、原子力発電事業の海外輸出に反対します。    このため立憲民主党・社民党などが提出している「原発ゼロ基本法」の成立とその実施法の実現をめざします。

   多くの原発メーカー・電力会社では原発事業が企業経営の根幹を揺るがし労働者の雇用を危うくしています。そこで働く仲間に対して、“原発は資本主義として破綻していること、原発に依存しない企業戦略に転換すべきこと”を要求して闘うよう呼び掛けます。

(10) 国内ルール・社会的規制より外国の投資家の利益を優先し、社会保障・農林水産業・自主的共済事業を危機にさらすTPP11、日米二国間FTA(自由貿易協定)に反対します。特に、日本農業・農家を根底から破壊する種子法廃止に抗議し、その復活を求めます。また、種苗法の改訂に反対します。

(11) 政権によるメディアへの干渉・圧力を、当該労働者と連携しながらはね返します。

(12) 以上の課題には、現職労働組合・市民運動組織と連携して取り組みます。この一環として、中央では「フォーラム平和・人権・環境」、地域では平和運動団体との間で連携を進めます。また、これまで運動を共有してきた「戦争をさせない1000人委員会」、「さようなら原発1000万人市民アクション」「伊達判決を生かす会」などとの連携を強めます。

憲法・平和・人権・環境の経過と情勢

(1) 改 憲    

安倍政権は、立憲主義を否定する解釈改憲という手法で一連の戦争法を強行可決した。日本国憲法を無視し、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)と日米地位協定で全てを律する手法がとられた。    加えて「自民党安倍総裁」は傲慢にも2020年までに第9条に自衛隊を位置づける第3項を付加する改憲を行うと表明した。    私たちは立憲主義否定、国民統制の改憲に反対し、日本を戦争に導く戦争法廃止に向けて「安倍9条改憲NO! 全国市民アクション」と連携して「安倍9条改憲NO! 憲法を生かす全国統一署名」に取り組んできた。今後も多様な方法で広く大きな運動展開が求められている。

(2) 反動諸立法    

憲法に定める表現・思想信条の自由を否定する特定秘密保護法を許すことはできない。また、これと同根の教育の統制・反動的教科書選定、「日の丸」「君が代」強制の条例化等は次世代教育をゆがめ、演劇・文学を含む表現の自由をも犯す。特高警察の再来・戦前回帰を許すことはできない。加えて治安維持法の再来である「共謀罪」は、国連人権理事会特別報告が表現の自由を不当に制約する惧れがあると表明しているように、司法取引・野放しの盗聴と相まって、日本を監視と密告、恣意的な警察の捜査と刑罰の社会へ極めて短時間で移行させる可能性を持っている。

(3) 国家主義と米買弁・日米地位協定    

安倍政権は、先の大戦を“自存自衛の戦争”と正当化する靖国神社に参拝する など戦前型の偏狭な国家主義を振りかざしながら、他方ではアメリカ政府に迎合 して買弁的政策をとるという背反した行動をとって来た。しかも、トランプ米大 統領の意を迎える官邸の判断でアメリカ兵器を高額で大量に購入し、防衛予算を 肥大させている。「イージス・アショア」導入が着手後停止に追い込まれたのも 安倍政権が進める一連の無計画なお買い物の結末である。「イージス・アショア」 計画の代替策として、自民党は8月4日に「敵基地攻撃力能力」の保有を安倍首相 に提言し、首相は「新しい方向性を打ち出し、速やかに実行していく」と呼応し た。敵基地攻撃能力の保有は専守防衛を逸脱し、対抗的軍備増強を助長する。 双方とも即時全面撤回すべきである。    また、オスプレイは試作段階から事故が多発し、これまでに小規模事故も含めると60件以上の事故により、乗組員40人以上が死亡しているといわれており、極めて危険なものである。続発している事故の原因解明・再発防止策もとらないまま、市民を危険にさらして日米一体でオスプレイ配備を拡大している。    在日米軍、その下働きに徹した自衛隊にこれ以上市民生活を侵害させないため、占領状態のままの日米地位協定を改定する必要がある。

(4) 急増する軍事費    

安倍政権下で、FMS調達(対外有償軍事援助)による武器の「爆買い」などにより防衛費がますます膨らんでいる。    日米同盟の強化と称して米軍のために集団的自衛権を行使し、外国で戦争する体制整備に税が注ぎ込まれている。    社会保障と平和は表裏一体であり、軍事費と社会保障費は相反する。現在安倍政権が購入しようとしている武器のほとんどは集団的自衛権行使による敵地攻撃を目的としたもので、安倍政権になる前の自民党政権による専守防衛の自衛隊の位置づけの下では不要なものだった。自衛艦・潜水艦の増も、まして空母の建艦など必要がない。防衛費が「軍事費」に化すことを許してはならない。

(5) 辺野古新基地建設反対    

辺野古新基地建設は、1966年の米軍のマスタープランで計画されていたが、施政権が返還されていない当時、建設費負担を嫌う米国の財政事情等で見送ったといわれる。施政権返還後は基地の建設・維持経費が日本政府負担となったため、米軍は老朽化した普天間に代えて辺野古に新基地を建設することを求めてきた。    1995年の(沖縄)少女暴行事件で沸き起こった県民の怒りを逆利用してこの計画を復活・推進しているのが現計画の本質である。悲劇や県民の怒りを逆手に取って利用する日米政府の卑劣さを表している。    許しがたいことに、安倍政権は埋め立て工事着工を強行したが、沖縄県民が切れ目のない反対行動を継続していること、県民投票・20年6月の県議選における与党の勝利など諸選挙でゆるぎない反対の意思表示を繰り返していること、辺野古の海面下90メートルには対処不可能な軟弱地盤があることなど、政権の思惑通りにはならないことが明確になりつつある。私たちは辺野古新基地をはじめ、全国の米軍・自衛隊基地による市民生活・環境破壊を許さず、決してあきらめることなく沖縄県民と連帯して阻止運動を続ける。

(6) ヘイト・組織化されたハラスメント    

世界中で既成政党への失望から、「単純で力強い」言説に魅かれる市民が増え、夜郎自大な国家主義・排外主義への支持が増えつつある。また、国会・自治体議会で、保守系政治家を中心に人権を傷つける暴言・野次が相次いでおり、これらの言動がヘイトスピーチを煽っている。本人の資質がいかに貧しくとも、公人の発言は関係者を深く傷つけ、国内外を汚染することを軽視してはならない。    また、企業や教育の場を含めて多様なハラスメントが横行している。ILOのハラスメント防止条約採択も活用して日本の国内法を整備し、人権尊重の根本理念・法制度を再確立せねばならない。一連の反動化は散発的に自然発生しているのではなく宗教団体・「ジャーナリスト」・保守政治家らで作る「日本会議」を軸に、反動的教科書採択運動とあいまって組織化されつつあることに留意し、反撃する必要がある。

(7) メディア・新聞倫理綱領    

この間政権・与党は放送法による電波停止命令を振りかざして体系的なメディア統制を展開しており、政権の意向を忖度したメディアの萎縮が顕著になっている。また、主要なメディアの一部は読売・産経新聞のように社是として露骨に自民党政権擁護をしている。一見政権批判をしているようでも根本では政権に取り込まれているものもあり、大手メディアに平和と民主主義の危機を回避する役割を期待することはできにくい現状になっている。政権による検察人事私物化事件の副産物として顕在化した一部検察官と新聞社の癒着もその片鱗を示した。新聞倫理綱領に署名した新聞社には綱領を制定したときの志と矜持を再度思い起こすことを期待する。    市民は、政権とその意を受けたメディアの誘導・支配に屈せず、事実を知り、それを自ら判断して行動・発信する必要がある。

(8) エネルギー政策・再生可能エネルギー    

国のエネルギー政策は、無制限な需要に応える集権的な供給構造を前提としている。これを転換し、地域自治でエネルギー政策決定、適正な供給量に対応する需要コントロール、多様で分散型の供給システムとすべきである。あわせて再生可能な自然エネルギーの開発普及により、直ちに温室効果ガスの削減に着手すべきである。気温上昇を防がない限り、19年9月に関東甲信・東北に被害を及ぼした台風19号、20年7月に九州・中部に被害を及ぼした集中豪雨などの不幸な気候災害は、これからも各地で再発すると思われる。このために、国・企業・個人がそれぞれの持ち場で取り組む必要がある。2016年4月から小口契約者も自由に購入電力を選択することが可能になり、それまで地域独占大手電力会社によって強制的に購入させられてきた電力を、市民が市場経済を通じて拒否できる力を持った。地域独占大手電力会社から再生可能エネルギー事業者への契約変更は現段階では必ずしも多くない。発電と送配電の完全分離によって再生可能エネルギーへの妨害を排除すること、電源構成公表の義務化、再生可能エネルギー発電事業者の育成など課題は山積しているが、自由化は運動を進める絶好の機会といえる。    また、「責任投資原則(PRI)」(投資の際に、環境保護や社会的責任を果たす企業行動に着目して投資先決定の優先条件にする)は再生エネルギー重視の有効な手立ての一つとなる。GPIFの責任投資原則への署名も活用して各領域で推進が期待される。

(9) 原 発    

「安全な原子力発電」宣伝の嘘が東日本大震災に伴う福島原発苛酷事故で顕在化した。しかも、オリンピック招致演説で安倍首相が述べた「アンダーコントロール」は虚偽で、増え続ける汚染水を保管するタンクを用意できず、海洋投棄さえ主張し始めている。    熊本地震は川内、玄海、伊方のほか全ての原発にも重大な危険性があること、そこで事故が起きれば偏西風という日本の気象条件下では福島原発以上に広範な国土が放射性物質に汚染されることを改めて示した。原発事故は地震や津波・火山噴火などの自然災害のほか、テロも原因となりうる。また、施設の老朽化や整備不良等による小規模事故は多発しており、いつ大きな事故が発生してもおかしくない状況である。それでも政府は、原発依存政策を変えようとしていない。    原発は資本主義原理に照らして割に合わない、廃棄物の処理は技術的にもコストからも極めて困難ということが世界の常識になりつつある中で、18年改定の新エネルギー基本政策でも原発にしがみついているのは、核兵器を持つための基盤技術として位置付けているとしか思えない。    連合は福島原発事故後、慎重な検討のうえ原子力エネルギーに依存しない社会をめざす方針を決定した。私たちはこれを共有したうえで一歩を進め、立憲民主党・社民党などが市民との対話から作り出して提出した①実用原子炉の計画的廃炉、②電気需要量の削減、③再生可能エネルギー電気供給増加をめざす「原発ゼロ基本法案」の成立と、その実施法の実現を求める。

(10) TPP    

政府はTPP参加について6年半の交渉を終え、多くの国民、関連団体の反対を押し切って16年2月4日TPP参加に署名し、第190国会に批准と関係法案を提案し、16年12月10日に成立させた。    政府は交渉中はもとより調印批准の国会審議に対してさえ一切の協議過程を明らかにせず、経済産業・社会ルールを破壊する条項に関する屈服と密約を隠したまま批准した。    その後当選したトランプ大統領が離脱を決定したため、アメリカを除く11か国で一部変更のうえ合意した。政権はTPP11の協定を批准したうえで、関連10法についても短時間の審議により18年6月29日参議院で強行可決した。関連法の一つである種子法廃止は日本農産物の多様な品種を消滅させ、寡占種子企業による農薬と種子のセット支配を呼び込むもので許すことはできない。農家・自治体・国が協力して地域に適合する種子の保存・改善を研究開発することは欠かせない、種子法復活を求める。また、種子法廃止と同時に成立した農業競争力支援法は、各都道府県が保有する種子に対しての知見を民間企業に譲渡することが明記されており、種苗法の改定は、企業の品種開発及び登録を容易にして海外への種子流出を防ぐとしているが、品種登録された種子は農家の自家増殖ができなくなり、許諾制による農家の負担過重も生じる。このことから種苗法改定に反対する。さらに、19年4月、日EU経済連携協定も合意に達した。このまま進行すれば、公的国民皆保険・自主共済・郵貯簡保等を危機にさらすとともに農林水産業に打撃を与え、ISDS条項により国内の社会・経済的ルールより外国の投資家の利益を優先することになる。不公平著作権も固定化される。    交渉が本格化しつつある日米二国間FTA協議は、米国の利益を第一とするトランプ政権の過酷な要求によりTPP交渉を大きく増幅した不利益が押し付けられる可能性が高まっている。    私たちは改めてTPP11・日米FTAに反対する。

3. 民主的政府・市民が主人公の社会づくりをめざします

(1) 2017年の第48回総選挙以来、自公維が両院で改憲発議可能な3分の2議席を超えるという極めて厳しい国会情勢が続いて来ました。2019年参院選の結果かろうじて改憲勢力の議席を2/3割れにすることができましたが、僅差で危険な状況が続いています。    

自公政権の暴走、ファシズムへの傾斜を阻む立場で諸選挙に取り組み、近く想定される第49回衆議院総選挙での政権交代を目指します。選挙活動にあたっては、現退一致の原則の下にそれぞれの現職組織とともに運動を進めます。

(2) 社会を覆う閉塞感は、ネット社会化とあいまってファシズムを呼び込む社会心理を産み出す危険性を持っています。単純化できない社会の仕組みを全体として理解する努力を払い、論議による合意形成を図ることでしか民主主義は成就しません。市民が主人公として国会・政府任せにしない行動をとることによってのみ、健全な社会づくりが可能になります。私たちはあきらめることなく地域から粘り強く取り組みます。

(3) 自治退は、自治労協力国会議員団との連携を軸に、立憲民主党・社民党などとの協力を強めます。

4. 住み続けられるまちづくりのため、交通政策を推進します

(1) 交通政策基本法の趣旨を踏まえ、高齢者や障害者、運転免許証返納者など交通弱者の生活維持のため、鉄道を含む地域公共交通・移動手段の体系的整備を求めます。

(2) 地域の活性化や住み続けられるまちづくりのため、自治体の総合計画や都市計画に、住民ニーズを反映した交通政策との連携を求めます。私たちの提起を受け止めて退職者連合が展開する政府・自治体に対する要求運動について、自治退として積極的役割を果たします。

(3) 交通政策基本計画の実効性確保のための取り組みを進めます。とくに交通専任者の基礎自治体への配置や育成地域公共交通会議(法定協議会)などの設置を求めます。

地域公共交通の現状と役割

(1) 地域公共交通を取り巻く状況は、人口減少や職の多様化、自家用車の普及に伴い、地域公共交通の利用者は長期的に減少傾向にあります。2011年度以降は、乗合バスや鉄道は緩やかな増加傾向にあります。背景には、都市部を中心とした人口や就業者の増加に伴う定期利用者の増加、訪日外国人旅行者による利用の増加があると考えられます。しかし、人件費や修繕費など運行に関係なく必要な「固定費」の割合が高い交通事業の経営状況は厳しく、2018年度の乗合バス事業者の約71.2%・地域鉄道事業者の約72%は経営収支が赤字となっています。その結果、不採算路線からの撤退や減便などにより地域住民の移動が制約される事態が進行しています。乗合バスにおいては、過去10年間(2009年~2018年)で全国のバス路線、約11338Kmが廃止されました。このように交通空白地域が広がる一方で、暮らしにまつわる移動を公共交通によらざるを得ない高齢者は、著しい増加傾向にあります。

(2) こうした中、新型コロナウイルス感染症の拡大に対して、3密(密閉・密集・密接)の回避や接触機会の8割削減、そして緊急事態宣言などの政策が次々と打ち出されました。その結果4~5月の乗車量は、およそ60%減と極めて大きな打撃を受けています。さらに全貌が不透明で長期化すれば、元々経営体力の余力に乏しい地域公共交通事業は経営危機を迎えることは必至です。

(3) 地方を中心とした人口減少の本格化、運転者不足の深刻化等に伴って、地域公共交通サービスの維持・確保が厳しさを増している中、一方で高齢化の進行による免許返納の増加等で地域住民・利用者の移動手段の確保、また、多様な関係者が連携した地域経済社会の発展に資する交通インフラ整備の実施で生産性の向上をはかることなど、地域公共交通ネットワークの再構築が求められています。

(4) 「持続可能な運送サービスの提供の確保に資する取組を推進するための地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律」が成立(2020年5月27日)しました。この法律は、持続可能な地域公共交通サービスを確保するために、地方公共団体が交通事業者等と連携して、最新技術等も活用しつつ既存の地域公共交通サービスの改善・充実をはかるとともに地域の輸送資源を総動員する取り組みを推進するとしています。しかし、交通専任者が不在の自治体は8割に上っています。施策の推進にあたっては、公共交通を地域の活性化や住民の生活に欠かせない公共サービスとして位置付け、住民ニーズを反映した施策が求められます。

(5) 高齢化の進行により、高齢者の自立、社会参加が重要な課題となっています。地域公共交通の衰退は、身体機能が低下した高齢者の移動を制約し、外出機会の喪失に帰結します。高齢者の自立を支援し、社会参加を促進するためには、地域公共交通の再生が必要です。また、外出機会の増加は、高齢者の健康増進につながるなど多様な観点からの取り組みが必要です。    

運転免許証返納を決断する高齢者が増えつつありますが、地域によっては代わる移動手段がないためやむなく運転を継続する例も多数存在します。第一義的に地域公共交通でカバーするべきですが、地域事情によっては他の方策を含めて移動を保障する施策が求められます。

5. 組織の拡充を図り、関係組織との連携を強めます

(1) 自治退は連合の「1千万連合構想」、退職者連合の「300万アクションプラン」を念頭に、現職労働組合との協力のもと「30万人自治退建設」を努力目標に設定し、組織拡大・強化に努めます。自治退会員数は漸減が続く現状にありますが、自治労との協力の下これを反転させて新会員獲得・新退職者会結成と自治退加盟により各級組織で組織の強化・拡大を図ります。

(2) 自治退の組織と活動における男女平等参画を進めるため、行動プログラムを作って取り組みます。

(3) 第45回定期総会で決定された「自治退財政赤字の改善策」実施の到達点を踏まえ、中長期的な自治退の自主的財政基盤確立を念頭に置いて「赤字解消策の到達点と今後の対処」に取り組みます。

(4) 自治退の組織特性を前提にしつつ、会員の利益を守ることと、社会的役割を果たす二つの運動目的を達成するため運動を進めます。この立場から、退職者連合とともに「カジノ賭博合法化反対」「不招請勧誘・販売規制」に取り組みます。

(5) 自治労・自治労共済との連携関係を強め、現退一致の運動を進めます。

(6) 都市交退協と自治退の組織統合の意義を大切にして、各級組織での円滑な連携を強化し、総合力が高まるよう取り組みます。

(7) 地域・全国それぞれに地公退・退職者連合と連携し、共闘の力が発揮できるよう取り組みます。この一環として可能な地域から自治退の地域協議会作りを進め、これを基盤に退職者連合の地域協議会運動に参画します。また、単会・会員が市民自治活動・地域社会のまちづくり・まちおこし・地域福祉に積極的役割を果たすよう取り組みます。

(8) 会員が培ってきた経験を生かして、自治労のコミュニティづくり運動・自治研活動と連携することをめざします。

(9) 市民と行政の協働の場となる地域の市民自治組織づくりに、行政経験を持つ会員が役割を果たすことをめざします。当面可能な地域で自治会・町内会等で活動する会員の経験交流などに取り組みます。

6. 福利厚生活動を強めます

(1) 会員の福利厚生とともに組織の財政基盤確立にも寄与する「安心総合共済」と「全労済自治労共済」の事業を推進します。    

特に減少が続いてきた安心総合共済加入者がついに一万人を割り込みました。20年は団体割引率が引き下げられましたが、制度運営費の活用で加入者負担増を回避し、21年募集に向けては東京海上とも協力して制度を一部改定しました。引き続き会員の福利を守るため一万人回復にむけて全力で取り組みます。

(2) これを実現するため「<別記1>自治退福利厚生事業の推進(案)」に基づき運動を進めます。

(3) 年金受取口座の設定など、会員による労金の活用を進めます。

(4) 可能なところから労働者福祉協議会(労福協)の地域・地区組織と連携して、職域を超えた地域連携活動により会員の居場所づくり、交流を深めることに取り組みます。

7. 具体的な取り組み

(1) 社会保障・税制などの課題について、自治労・連合・地公退・退職者連合が実施する署名・ハガキ運動、対政府行動・国会要請行動などに積極的に参加します。また、退職者連合が取り組んでいる、政策制度要求・自治体要請行動を積極的に担い各地域で運動を展開します。

(2) 自治退は社会保障制度・税制・平和問題などの運動推進に当たって、自治労との連携を密にします。現職労働組合から参加の呼びかけがある運動には、積極的に協力します。また、自治労組織内国会議員、政策協力国会議員の皆さんには引き続き自治退顧問就任を要請・委嘱します。

(3) 地公退を通じて参画している「フォーラム平和・人権・環境」をはじめ、目的を共にする団体と連携して自治退として可能な範囲で取り組みます。

(4) 9月の地公退高齢者集会、全国高齢者集会に積極的に参加します。

(5) 2021年は地域学習会開催年に当たりますが、具体的計画は今後のコロナ禍の動向を見極めながら協議します。

(6) 自治退は2022年に結成50周年を迎えます。記念行事や年史編纂等を検討するとともに50周年を契機に、これまで取り組んできた「財政確立」「組織拡大」「男女平等参画」「福利厚生活動」を検証し、50周年までの2ヵ年にそれぞれの行動計画を策定して取り組みを強化します。